恒例のクリスマス自慢
職場の休憩時間、お茶を飲んでいた女性社員たちのあいだで「今年のクリスマスどうする?」という話題が自然と出ました。この流れになると、必ずスイッチが入るのが同僚の美香さん(仮名)。以前付き合っていた彼との豪華なクリスマス話が自慢のようで……案の定、この日も始まりました。
「前の彼、サプライズ上手でさ〜」「そのときホテルのスイートに泊まって〜」毎年恒例の“クリスマス武勇伝”。もはや、うちの女性社員たちの中では冬の風物詩です。
みんな苦笑い、でも止まらない
私を含む女子メンバーは慣れっこで、内心では「出た出た……」「あ〜今年もきたな……」と苦笑い。でも本人はその反応に全く気づかず、話せば話すほどテンションが上がっていくタイプなのです。誰も止められないまま相槌を打っていると、美香さんの自慢はますますボリュームアップしていきます。
通りすがりの同僚男性が爆弾投下
ちょうどそのとき、給湯室へ向かう途中だった同僚の佐藤くん(仮名)が私たちの近くを通りかかりました。たまたま耳に入ったと思われるのが、美香さんの「スイートでケーキが運ばれてきて〜」のくだり。佐藤くんは悪気なく、明るい声でこう言ったんです。
「え〜! 美香さんすごいですね! 次に付き合う彼、プレッシャーすごそうだなぁ(笑)」その場にいたみんなは、反応に困り苦笑い。でもその瞬間、私はハッと思い当たることがありました。(あ、美香さん……佐藤くんのこと気になってるんだった……)
マウント女子、静かに撃沈
美香さんは「えっ! あっ……いや、その……」と急に声が小さくなり、それまで勢いよく話していた自慢話がピタッと止まりました。なんだか気の毒。でも、正直ちょっとだけスカッとしたのも事実です。
それ以来、美香さんのクリスマス自慢はほんのり控えめになった……気がします。私にとっては、あの絶妙な空気感が忘れられない、冬の出来事になりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

