深夜のリビング
夜遅くまでパソコン作業をしていた私は、少し休もうと照明を落とし、リビングで横になりました。いつの間にか深い眠りに落ちていたらしく、ふと目を覚ますと、静まり返ったリビングの空気はピンと張りつめていました。その瞬間、部屋中からパキパキッと音が鳴り始めたのです。
最初は家鳴りだろうと思いましたが、なぜか落ち着かない気配があります。しかし、睡魔の方が強かった私は、再び目を閉じてしまいました。
金縛りの中で感じた気配
どれくらい眠ったのかは分かりません。再び意識が戻った時、胸の奥がざわついていました。体を起こそうとしても、全く動かない。金縛りだーーそう理解した瞬間、枕元に“何か”が立っているのを感じました。
薄く目を開けると、薄明りの中、真っ黒な影のようなものがそこにいたのです。形ははっきりしないのに、確実にこちらを見ている気配だけが伝わってくる。心臓がドクドクと早鐘を打ち、背中を冷たいものが伝います。
「これは、良くないやつだ」そう思っても、叫ぶことも動くこともできません。その“何か”はゆっくりと揺れながら、私の方へ傾いてくるようでした。
愛猫の威嚇
恐怖に怯えていた私の耳に「ウゥゥ……」という低い唸り声が響きました。目の前には飼い猫のハナの姿が。いつもは穏やかなハナが、誰かに向かって牙をむくように怒っています。影の方向をまっすぐ睨みつけ、毛を逆立てて威嚇していました。
その気迫に押されたように、突然、金縛りがふっと解けたのです。私は跳ね起きるように体を動かし、慌ててリビングの電気をつけました。明るくなった部屋には、当然ながら誰もいません。
ハナはしばらく影のあった場所を見つめていましたが、やがて落ち着き、そっと私に寄り添ってきました。そのぬくもりに、ようやく胸のつかえがほどけた気がしました。
感じた恐怖と守られている安心感
あの黒い影が何だったのかは、今でも分かりません。ただ、ハナがあれほど強く威嚇するのは珍しいこと。動物は、人が気づけないものを敏感に察知すると言われます。あの夜、ハナは確かに私を守ろうとしてくれたのです。
怖い体験ではありましたが、同時に「動物の感覚の鋭さ」や「寄り添う力」を強く実感した夜でもありました。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

