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私がホテルで働いていた頃、素朴で控えめ、社食の定食をこよなく愛する後輩・山田君(仮名)が、誰も想像しなかった結婚式を挙げました。彼の正体に、職場が一時騒然となったエピソードをご紹介します。

地味なスーツと定食を愛する「噂の新入社員」

私の3年後輩に、山田君という社員がいました。営業部に配属された彼は、同期が営業成績を競い合う中で、控えめで目立たない存在でした。若い社員は着たがらない会社支給の地味な紺のスーツを着用し、社員食堂では一番安い定食を好んで食べていました。

招待客リストに並んだ政財界のVIPの名前

ある年、山田君が結婚することになりました。驚いたのは、その披露宴の規模です。ホテル最大の宴会場で昼と夜の二部制、総勢1,200名の大披露宴。ホテル中にざわめきが広がりました。招待客リストには経済界の大物や現職大臣、ホテルの社長の名もありました。

このとき、彼の実家が北海道で多くのグループ企業を持つ大手不動産会社だと判明したのです。「自分の関係ないところでいろいろ決まっていくんですよ。招待客も知らない人ばかりだし」と、当の山田君は他人事のように話していました。

御曹司の風格

披露宴当日、ホテルのエントランス前には黒塗りの車が列をなし、VIPの受け入れにホテル中が奔走、会場の緊張感は最高潮に達していました。大臣の祝辞を受け、壇上に凛と立つ山田君の姿は、いつもの社食で定食を食べる姿とはまるで別人。

現場スタッフたちは「“御曹司の風格”が漂っていた」と口々に話していました。営業成績が芳しくなかった彼を軽んじていた同僚も、「あいつ、すごい奴だったんだな」とつぶやいていたのです。

虚勢を張る必要がない人が持つ「余裕」

周囲のざわめきをよそに、新婚旅行から戻った彼は、いつもの山田君でした。その後も、営業成績は振るわず、時折実家の関連企業の宴会を受注する程度。一つ変わったことと言えば、昼食が社食の定食から手作りの弁当になったことくらい。やがて誰も彼の実家のことを話題にしなくなりました。

私は、虚勢を張る必要がない人の「余裕」を、彼の姿を通して実感しました。周囲の評価に一喜一憂することなく、マイペースを貫いている人が周囲にいたら、もしかしてどこかの御曹司かもしれません。

【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。

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