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同じ時期に入社した同僚は、学歴も資格もある“完璧な人”。仕事もそつなくこなし、上司からの信頼も厚い。そんな彼に対して、私はずっと距離を感じていました。今回は、そんな彼と初めて仕事をしたときのエピソードです。

完璧に見えた同僚

同じ時期に入社した男性社員がいました。彼は有名大学を卒業し、複数の資格を持ち、上司からの信頼も厚い“エリート”と評判の人でした。

一方の私は特別優秀というわけではなく、地道にコツコツ仕事を進めるタイプ。どちらかというと「サポート役」でした。

増えていく“フォロー”の毎日

そんな彼と、決算業務で連携することになったのは入社から少し経った頃。最初は頼もしいと思っていましたが、意外にも彼のミスが多く、フォローすることが増えていきました。「誰にでも間違いはある」と自分に言い聞かせながら修正していたものの、同じようなミスが繰り返され、次第に不安が募っていきました。

さらに困ったのは、彼がいつも定時で帰ってしまうこと。残業して修正を進めていても確認が取れず、仕事が止まってしまうことが多くなりました。内心、「あんなに優秀と言われているのに、どうして?」という気持ちが膨らんでいったのを覚えています。

優秀の裏にあった事情

そんなとき、先輩社員から思いがけない話を聞きました。

「彼、親御さんの介護をしているみたいだよ。だから定時で帰るのは仕方ないんだって」

家庭の事情がある中で必死に仕事をこなしていたのに、その努力に気づこうともせず、勝手に理想像を押しつけていたのは私の方でした。それまで私は、「優秀なら何でも完璧にできるはず」と思い込み、彼を“完璧な人”の枠に押し込めていたのかもしれません。

弱さを知って変わった景色

そんなある日、また数字の入力ミスが見つかりました。私は資料を確認しながら彼に声をかけると、彼は少し照れくさそうに笑いながら言いました。「僕、数字を見ると頭が真っ白になるんです」その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた何かがすっと溶けていくのを感じました。

「そうなんですか? 私もなんです。難しいですよね」と笑い返すと、彼も穏やかに笑い、「いつもフォローしてくれてありがとうございます」と言いました。そのやり取りをきっかけに、私の中で何かが変わりました。

“優秀”とは、決してミスをしないことではない。弱さを隠さずに努力し続けること。そして、支え合いながら成長していけること――それこそが、本当の意味での“優秀さ”なのかもしれません。互いの弱さを知り、助け合えることこそ、働くうえでいちばん大切な力なのだと気づかされました。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

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