「自分、人付き合い苦手だから」が口ぐせの上司
編集部の上司、武藤さん(仮名)は、「自分、人付き合い苦手だから」が口癖。会話を避けるための呪文のように、打ち合わせでも雑談でも、そのセリフが飛び出しました。
「口頭よりメールのほうが正確だから」と言って、連絡はメール主義を徹底。
隣にいても、返事はメールだけ
同じ部署の私たちですら、隣の席にいながらメールで返事をもらうことが珍しくありませんでした。
「この件、進めていいですか?」と声をかけても、数分後には受信トレイに「了解です」の一言。
打ち合わせ中に意見を求められても、ため息混じりに「まあ、任せます」と言って手を止めなかったり、話しかけても「僕は関係ないんで」と言ってデスクに戻ったりと、コミュニケーションを拒否され続けていました。
思わぬ誤送信で社内騒然
ところがある日、事件が起きました。クライアントとの案件で、武藤さんが社内向けのメールを誤ってクライアントに送信してしまったのです。しかも内容は、「またあの担当か……。話長いんだよな」という、社内でも絶対に口に出せない一文。
社内は一瞬で凍りつきました。結局、武藤さんが自らクライアントに謝罪することに。
直接話すことの大切さに気づいた日
その出来事以降、武藤さんの態度には少しずつ変化が見えました。「やっぱり、直接話したほうが早いな」と打ち合わせで口を開くようになり、メールだけの対応は減少。相変わらず人付き合いは得意ではないと言っていますが、面倒くさがりながらも会話してくれるようになりました。
あの誤送信事件が、彼のコミュニケーション改革の第一歩となったのでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

