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お客様の言葉を信じつつ、冷静に事実を確かめる——接客の現場では、そのバランス感覚が何より大切です。今回は、筆者本人がドラッグストアで体験したドタバタエピソードを紹介します。

レジ応援の呼び出し

その日、レジ応援の呼び出しボタンが鳴り、慌ててレジに向かいました。見ると、新人パートのレナさん(仮名)が、見覚えのない中年の男性と真剣な表情で話をしています。「どうしたの?」と声をかけると、レナさんが困った顔で、「以前お買い物をされたとき、ハブラシが袋に入っていなかったそうなんです。でも忘れ物ボックスにもそれらしいものがなくて……」と説明してくれました。

手がかりのないハブラシ

私は「それじゃあ、私が代わるね」と引き継ぎ、男性に確認しました。「失礼ですが、購入されたときのレシートはございますか?」すると男性は、「捨てちゃったんだよ。何とか調べてくれ」と言います。
話を聞いているうちに、買い物した日付も時間帯も覚えていません。唯一の情報は、「レジ担当が田中さんって人だった」という一言だけ。その程度では履歴を辿るのは難しく、丁寧に事情を説明してお断りしました。男性は少し不満そうにしながらも、いったん店を後にしました。

再び現れたお客様

数分後、男性が再び来店。今度は「ポイントカードがあったんだ! それで調べられるだろ?」と意気揚々にカードを差し出します。その勢いに押されつつ、私はレジ履歴を遡って確認することに。約20分ほど格闘した末、“それらしい”履歴を発見。レシートの購入欄には「歯間」と書かれていました。
私が売り場情報をもとに在庫を確認しようと歩き出すと、男性も私の後ろについてきます。「やっぱり買ってただろ? あっちの棚のハブラシを取ったんだ」と自信満々です。しかし、データに記載されていたのは“歯間ブラシ売り場”。念のためもう一度レジの履歴を確認すると、購入されていたのは歯間ブラシだけ。

お客様が実際に買っていたもの

「お客様、もしかして買われたのは歯間ブラシではないですか?」と尋ねると、男性は「あぁ、それも買ったよ。でもハブラシも……あれ? 履歴に入ってない?」と首をかしげました。
「レジの履歴上、ハブラシは会計されていませんね」と伝えると、「あれ~? 勘違いだったか! 悪い悪い!」と笑いながらそそくさと帰っていきました。時計を見ると、対応を始めてから約40分。「私の時間を返してくれ~」と心の中で叫びながらレジ履歴の担当者名を見ると、“田中さん”ではなく“斎藤さん”でした……。

思い込みへの対応力

接客をしていると、悪気のない勘違いに出くわすことが少なくありません。お客様にとっては小さな違和感でも、私たちスタッフにとっては真剣な調査。今回のことで、改めて感じたのは「事実確認の大切さ」です。思い込みや記憶違いに左右されず、冷静にデータを追う。それが結局、お客様にも自分にも誠実な対応になるのだと学びました。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

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