二面性のある男性社員
営業部署で勤務していた頃、後輩女性に対してセクハラを繰り返す木本さん(仮名・30代男性)がいました。上司の前では人当たりよく「面倒見のいい兄貴分」の様に振る舞うのですが、後輩女性の前ではまったくの別人。聞いてもいない過去の女性関係を武勇伝のように語ったり、帰り際に二人きりになった女性を強引に飲みに誘ったり手を握ったりと、誰もが距離を置きたくなる存在でした。
広がる不安と無力感
彼の行動は次第にエスカレートし、「今日は奥さんが帰って来ないから」などと後輩女性を自宅へ誘うなど悪質に。女性社員の間では問題視されていたものの、上司に相談しても「証拠がないと……」「しばらく様子を見よう」と頼りない返答ばかり。
私たちはどうすることもできない無力感に包まれ、自衛するしか手段がなく、正直誰もが手を打つことすら諦めていました。
告発による決着
そんな状況が3年ほど続いた後、木本さんが関西の支社に異動。私たちは新しい犠牲者が出ないよう祈るしかできなかったのですが……数か月後、あるニュースが飛び込んできたのです。
なんと異動先で、既婚であることを隠し新入社員の女性と関係を持ち、さらに他の女性たちにもしつこくアプローチしていたとのこと。その新入社員や女性社員たちが一丸となって上司に告発。その上司がすぐに行動を起こした結果、木本さんは懲戒解雇になりました。
被害者の勇気と、正義が通った瞬間
その知らせが社内に伝わった時、後輩や同僚たちは「やっとだ……」と口をそろえて安堵しました。そして声を上げてくれた女性社員たちや現地の上司に心の底から感謝しました。
木本さんの一件で、「証拠と勇気があれば、正しい対応は必ずなされる」ということを実感しました。不正や理不尽を放置せずに声を上げることの大切さを学んだ、忘れられない出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

