家族や友人との心の距離を縮めてくれる“ニックネーム”。時にニックネームは人以外に使われることもあるようで……? 今回は医療事務をしている友人から聞いた、ニックネームにまつわるエピソードです。
めめちゃん
社会人1年目に勤めていたのは、小さな眼科クリニックでした。ある日、診療が終わり掃除をしている時、院長先生が眼球模型を手に取り「めめちゃんの掃除は丁寧にね」と微笑んだのです。最初は思わず吹き出しそうになりましたが、先生は本気でその模型を大切に扱っていて、器具一つひとつへの愛情が伝わってきました。
みみちゃん
数年後、夫の転勤に伴い別の地方へ引っ越し、今度は耳鼻科で働くことに。ある日、院長先生が耳の模型を指して「みみちゃん、今日もお疲れ様」と声をかけた瞬間、私は思わずめめちゃんの事を思い出しました。
「前の職場にも模型にあだ名をつけていた院長がいたな」と懐かしい記憶がよみがえり、不思議な デジャヴを感じずにはいられませんでした。
二人の院長先生
昼休みにその話を先輩事務員さんにすると、「模型に名前をつけてる先生なんて聞いたことないよ」と驚かれました。そう言われて改めて考えてみると、前の院長と今の院長、苗字が同じなのです。しかも、どちらもかなり珍しい名前。まさかと思いつつ、ある日、勇気を出して院長先生に尋ねてることに。
「先生、〇〇県の眼科にご兄弟がいらっしゃいますか?」すると先生は目を丸くして笑い、「そうだよ、よく知ってるね!」と答えたのです。なんとめめちゃんとみみちゃんの院長先生同士は兄弟だったのです。
三兄弟の院長
さらに驚くことに、その院長先生たちは三兄弟で、もう一人もお医者さまなのだとか。模型や器具を大切に扱い、愛着をもって仕事をされる姿勢に尊敬の気持ちを抱くと同時に、どこかユーモラスで温かい人柄に親近感を覚えました。
私はひそかに、次の転勤先で“三人目の兄弟”に会えることを楽しみにしています。そんな淡い期待を胸に、今日も受付カウンターで患者さまをお迎えしています。ユーモラスな院長をお手本に、身の回りの道具を大切に扱おう、と改めて思えたエピソードです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中

