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子育てをしていると、子供の“宿題”になつかしさを覚える人も多いのではないでしょうか。今回は、夏休みの宿題にまつわるエピソードです。小学生のお子さんを持つ私の友人から聞いた不思議な話をご紹介します。

防空壕を描いた息子

小学生の息子は夏休みの宿題にポスターを描きました。彼が選んだのは先日、家族旅行で訪れた沖縄の防空壕。子どもなりの感性で描いたその作品は、神秘的な雰囲気をまとっていました。提出後、校内で選ばれ、県の絵画展に飾られることになったと聞いたときは、本当に誇らしい気持ちになったのを覚えています。

赤文字でのコメント

展示が終わり、作品が戻ってきたのは2学期の終わり頃のことです。絵の端には、名前と学年が書かれた紙が貼られており、その横に赤いボールペンで数行のコメントが添えられていました。息子が「これ、なんて書いてあるの?」と聞くので目を凝らしてみましたが、あまりに達筆でまったく読めません。

少し気になり、個人面談のときにその絵を持参して担任の先生に「このコメント、どの先生が書いてくれたんでしょうか?」と尋ねると、先生も不思議そうな顔をして、「確認してみます」と言って絵を預かってくれました。

コメント主は謎のまま

数日後、担任の先生から連絡がありました。校内のどの先生にも心当たりがなく、旧漢字を使っていることから子どものいたずらでもないとのこと。教頭先生が展示会本部にまで問い合わせてくださったのですが、やはり該当者は無く、結局だれがコメントを書いたのかはわからぬまま。

息子が怖がっていたので「展示会のスタッフさんが書いてくれたんだって」と私は笑ってごまかしました。でも、心のどこかでずっと引っかかっていました。

感謝の気持ち

後日、懇意にしているお寺に相談してみることに。住職はそのコメントをしばらく見つめたあと、静かにこう言いました。「これは悪いものではありませんよ。お祓いの必要もありません」

その内容を要約すると「描いてくれてありがとう」。住職によれば、息子の絵を通して多くの人が防空壕のことを思い出したこと、戦争について考えてくれたことで、長い間そこにとどまっていた魂が救われた、とのことでした。

息子には今も「展示会の人のコメントだよ」と伝えています。けれど、いつか大きくなったら、本当のことを話すつもりです。あの赤文字のコメントは、きっと“感謝の声”だったのだと、今ではそう思っています。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:佐野ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

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