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否定されるとつい萎縮して、本来の力が出せなくなる。そんな経験、一度はあるかもしれません。今回は、私が出版社時代に体験した、フラットに意見を出し合うはずの会議の空気を悪くしてしまう上司にまつわるエピソードです。

会議の空気を重くする上司

定例の企画会議での話です。新しい連載や特集テーマを持ち寄る場で、若手も積極的に意見を出す雰囲気でした。

ところが上司の武田さん(仮名)は、人の案を聞くとすぐに鼻で笑います。「それ、前も似たようなのあったよね?」と茶化す言動をはじめ、根拠のない指摘と、相手を傷つける物言い。気になりながらも、最初は「悪気があるわけじゃないから」と思って流していました。

提案した企画案に対する鋭い突っ込み

ある日、私が考えた企画案を発表したときのこと。まだ手が少し震えるくらい緊張しながら説明していると、武田さんが鋭く突っ込んできました。

「え、それって誰が読みたいの? 数字取れるの?」

強い口調の言葉が会議室に響き渡り、空気が一瞬で凍り付きます。
頭の中は真っ白で心臓はバクバク。次に何を話せばいいのか思考が止まり、口から出るのはか細い声だけ。周囲も遠慮して口を閉ざし、沈黙が重くのしかかるように広がっていきました。

すると、壁の時計の秒針の音までもが異様に大きく聞こえはじめ、私は手元のメモを何度もめくりながら、言葉を必死で探します。

周囲からのフィードバックと変化の兆し

その様子を見た吉岡さん(仮名)が、静かに、しかし確かな声で武田さんに声をかけました。

「武田さん、意見を言うなら根拠を添えてください。言い方も少し配慮してもらえると助かります」

それをきっかけに周囲も次第に反応します。「発表者を萎縮させない言い方を意識してほしい」と、さりげなくフォローする声も上がり、会議室には少しずつ柔らかい空気が戻ってきました。

すると武田さんは一瞬、言葉に詰まったように戸惑った表情を見せ、眉をひそめながらも口を閉じたのです。その姿を見て、緊張で固まっていた私の肩の力も、少しずつほどけていきました。

「バカにせず、まず聞く」学んだコミュニケーション

次の会議からは、武田さんは鼻で笑ったり否定せず、企画案に具体的で前向きな質問をするようにななったのです。こうして会議室の空気も柔らかくなり、私も安心して説明できました。

あの経験を通じて、意見を出す場で相手を見下すことの影響の大きさと、先ずは発想を受け止める姿勢の重要性を実感しました。
会議の空気が個人の意欲に直結するコミュニケーションの力を学んだ、貴重な経験です。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2023年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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