子どもの頃から大好きだった場所
私は山に囲まれた町で育ちました。だからこそ、夏に家族と出かける海は特別な存在です。
なかでも、海水浴客が少ない岩場の海岸は、子どもの頃からのお気に入り。磯遊びに夢中になり、大人になってからも子ども達を連れて遊びに行く──それが私にとって、夏の恒例行事でした。
ただ、午前中は楽しいのですが、昼を過ぎると急に雰囲気が変わるのです。その理由は誰も言葉にしません。けれど、子どもの頃から自然と「その海岸で遊ぶのは午前中だけ」という暗黙のルールがありました。
気持ちが沈んだある日の夕方
ある日の仕事終わりのこと。気持ちが沈んでどうしようもない日でした。私は家へ帰ることなく無意識のうちに車を走らせ、気づけばあの海岸にいました。どうしてここに来たのか、自分でもわからないのです。そしてまるで何かに導かれるように車に乗り込み、さらに海岸線を先に進みました。
車内から見る夕暮れの海は、見慣れた場所のはずなのに別世界で、吸い込まれるような恐怖を感じました。そして、ふと気づけば少し先には高い崖が。その崖の上から何かが迫ってくるような気配を一瞬で感じ、私は逃げるように帰路につきました。
繰り返される導き
それ以来、不思議なことが続きました。気持ちが落ち込むたびに、思い出の海岸近くのその崖へ『行きたい』と思ってしまうのです。怖いと分かっているのに、なぜか引き寄せられる……。
そんなことが何度か起こった後、私は恐怖心に押されて崖の曰くついて調べることにしました。崖の上にあったもの。それは、無数の古い墓と、その人々を祀った石碑でした。それを知った時、思わず鳥肌が立ちました。
私を呼び寄せていた存在
しかし私は、点と点がつながった気がしたのです。気持ちが弱った時にだけ、そこへ向かってしまう理由と、崖に眠る存在が私を呼んでいたのかもしれないという恐怖。あの場所の異様な雰囲気に、「偶然」では片づけられない感覚があり、背筋が凍る思いでした。
この体験をした日から、「弱っている時ほど、気をしっかりと持たなければならない」と、心に刻んでいます。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

