出勤してびっくり
私が働いていたカフェは、カウンターで注文するタイプのお店でした。ある日の朝9時、出勤してレジ前に置いてあるメニューを見ると……驚くほど「SOLD OUT」の文字ばかり。
定番のクリームが乗った甘いドリンクやフードメニューも半分以上なく、さらにレジ横の焼き菓子までスカスカ。何か不測の事態があったのか? 思わず「えっ!? 何があったんですか!?」と声を上げてしまいました。
店長のまさかの失敗
先輩スタッフに聞いてみると、なんと店長が発注を忘れてしまったとのこと。人間だからミスもあるだろうし、最初は「そんなこともあるのか」と思っていたのですが……その後も同じようなことが何度も起こりました。
実は店長は、県外の店舗から異動してきたばかりの20代前半の青年。今のお店で店長を任されるのは初めてで、純粋にコーヒーが好きで熱意はあるけれど、もともとおっとりした癒し系の性格。
自分でも「発注は打ち込んでいても、確定ボタンを押し忘れることが多いんです」と苦笑いしながら話していました。
スタッフの反応
私より長く働いているスタッフたちは慣れているのか「またか……」と呆れ顔。
お店では常に何かしら売り切れている状態が続き、私を含めスタッフは「申し訳ありません」と謝りながら接客をしていました。
幸い「ないの?」と笑って受け止めてくれるお客様が多く、怒られることはありませんでしたが、内心ヒヤヒヤしていました。
店長も完璧な人間ではない!
しかし、決して店長が怠惰なわけではありません。店長は真面目で一生懸命。お客様に喜んでもらいたい気持ちも強い人でした。
だからこそ、みんな「また発注忘れか」と突き放す気持ちにはなれませんでした。
むしろ、「どうしたら店長をサポートできるだろう」「自分たちがフォローできる仕組みを作ったほうがいいのでは」と自主的に考えるようになった結果、発注もスムーズに。
店長だからといって全てを任せっぱなしにせず、スタッフ同士で協力して支えることの大切さを感じた出来事でした。
【体験者:30代・飲食店、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。

