気合いの入った職場と課長の価値観
私がある部署にいた頃のお話です。そこは、300以上ある部署の中でも常に1位の成績を目指す、ピリピリとした雰囲気の職場でした。
課長は、50歳の男性で誰よりも仕事に厳しい人。育児は妻に任せきりで「子どもに懐かれていない」と自ら平然と言っていました。子育てに理解のない発言が多く、産休に入る前日には「子どもなんて産んでる場合じゃないよ! 早く復帰して営業成績を上げよう!」と笑っていました。
復職後も続く偏見に苦しむ
産休から復帰した私は、1年のブランクを埋めようと必死に働いていました。しかし、保育園のお迎えなど時間の制約があり、以前のようには働けません。
そんな状況で、課長から度々衝撃の言葉が。
「母親業は仕事の足手まといだな」
「昔みたいに効率よく働けないよな」
見下すような発言に周囲の母親社員たちは反論できず、ただ苦笑いするしかない状況で、職場の空気は重く沈んでいました。
先輩の切り返しで場が一変
その空気を破ったのが、ある男性の先輩でした。
「母親業は最難度のマルチタスクですよ。うちの妻を見ていても本当に大変そうで、全国のお母さんたちは常に努力していて尊敬します。僕たちなんて仕事だけしていればいいんだから楽させてもらってますよ」
課長に堂々と言い返すだけでなく、最後に自虐を混ぜてくれたことで場が和みました。母親社員たちは大絶賛。課長も肩身が狭くなったのか、それ以降、公の場で母親業を見下すような発言はしなくなりました。
働く母への称賛
先輩の言葉は、母親社員にとって大きな励みとなりました。子供がいることを理由に「足手まとい」とされる空気を、一瞬で「尊敬すべき努力」と言い切ってくれたことが、何より心強かったのです。あの瞬間、母としても、社員としても胸を張って働いていいのだと確信できました。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2018年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。