元気だった祖母の入院
90代になっても、祖母は庭や畑に出て土をいじるのが日課でした。ところが、軽い心筋梗塞で入院することに。大事には至らなかったものの、検査で癌が見つかり、そのまま長期入院となりました。「早く家に帰りたい」と繰り返す祖母の姿は、普段の元気さを知っているだけに胸が痛みました。
祖母が口にした不思議な話
病院の近くに住んでいた私は、2日に一度はお見舞いに通いました。
ある日、祖母が嬉しそうに「今日はアジサイを見に行ってきたんだよ。天気も良くて綺麗だった」と話し出しました。もちろん外出なんてしていません。
「夢で見たの?」と尋ねると、「いや、カズ(私の長兄・仮名)たちと一緒に行ったんだよ」と言うのです。
兄に聞いてみると
不思議に思った私は、兄に祖母から聞いた話のことを伏せて「最近どこかに出かけた?」とさりげなく聞いてみました。すると、「家族でアジサイが有名な場所に行ったよ。ただ、ずっと誰かの気配を感じてたんだよね」と答えたのです。
霊感の強い兄の言葉に、祖母が本当に一緒に出かけていたのでは……と感じました。
その後も祖母は、「昨日はあそこに」「今日はここに」と楽しげにお出かけの話をしてくれました。
祖母らしい自由さ
ついていく相手は兄だったり、祖母が可愛がっていた親戚のおじさんだったり。体は病院のベッドにあっても、祖母らしい自由さは失われていませんでした。話を聞きながら「本当におばあちゃんらしいな」と、思わず笑みがこぼれてしまいます。
しかし、祖母は日に日に弱っていき、入院から2か月後、93歳で静かに息を引き取りました。
庭に宿る想い
祖母が大切にしていた庭は、色とりどりの花や草木で輝いていました。肉体は動かなくても意識だけは自由に飛んで、きっとこの庭も眺めにきていたのでしょう。そう思うと、心が少し救われました。
大切な人が亡くなっても、その人の想いや存在は姿を変えて、私たちのそばに残り続けるのだと感じた出来事でした。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。