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「常識のものさしは人それぞれ」。威圧的な態度をされると、わからないことも聞きづらくなりことも……。こうした状況を経験したことがある人も、意外と少なくありません。今回は、私が出版社で働いていた頃に出会った、威圧的な上司を黙らせた、ちょっとスカッとするエピソードを紹介します。

頼れる先輩の口ぐせ

出版社で働いていた頃の話です。
編集部には小川さん(仮名)という社員がいました。経験豊富で知識も豊か、頼りになる存在。しかし、ちょっとした確認や提案をすると、必ず返ってくる言葉がありました。それは「それくらい常識でしょ?」という口ぐせ。
最初は「経験豊富な先輩だから仕方ない」と思っていました。

萎縮する編集部

しかし、毎日のように同じフレーズを耳にするうちに、質問すら口に出しにくくなる状況。
新人もベテランも、少しでも間違えたら「それくらい常識でしょ?」と指摘されるのではないかと萎縮する空気。
編集会議では、発言をためらう人が増え、会議室は重苦しい緊張感に包まれていました。誰も意見を言わない沈黙に議論が進まない閉塞感。

小さな反撃の瞬間

ある日のこと、私は企画書の内容について確認が必要でした。
いつもなら「それくらい常識でしょ?」で片付けられる場面です。そこで、あえて具体的な根拠や数値を細かくメモにまとめ、資料を机に置いたまま静かに質問しました。
小川さんは一瞬、いつもの口ぐせを言おうとしました。
しかし、資料を目にした瞬間に言葉が止まる。「あ、なるほど……」と小さくつぶやき、席に戻ったのです。
周囲は驚きと小さな笑いに包まれ、あの重苦しかった空気が一瞬で軽くなった瞬間。室内に訪れた小さな安堵。達成感と共に、誰もが少しずつ肩の力を抜いた時間。

口ぐせを超えた小さな勝利

その日以来、小川さんの口ぐせは相変わらずですが、数字や根拠を示されると、あっさり黙ってしまう人だと気づきました。
口ぐせだけで威張る人も、論理と証拠の前では無力。力の源は知識と準備にあることを痛感しました。
あの日のちょっとした撃退劇は、私にとって「根拠の大切さ」と「言葉の力」を教えてくれた忘れられない経験です。緊張感の中での小さな勝利。
同時に、相手を責めるのではなく、状況を変えるための行動や工夫の大切さも学んだ瞬間でした。
あの出来事は、今でも仕事を進めるうえでの指針として、私の心に刻まれています。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2024年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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