仕事漬けの日々
保険会社に勤務していた頃の私は、とにかく激務に追われていました。毎月の残業は100時間が当たり前、土日もゴルフ接待や客先イベントに駆り出される日々。平日も休日も人生のすべてが仕事で埋め尽くされ、プライベートなど充実させる気にもなりません。気がつけば、生活のすべてが「仕事」に支配されており、心身ともに疲れ切っていました。
人生を犠牲にする感覚
当時、本心では興味のある習い事があったのですが、「土日に仕事が入ったら通えないかもしれない」と諦め、平日の食事の誘いも「残業があるから間に合わない」と断る毎日。仕事を理由に自分の人生を制限していることに気づきながらも抜け出す気力もなく、当時の私は仕事に人生を奪われているというマイナスな気持ちでいっぱいでした。
「会社だけが人生じゃない」と教えてくれた先輩
同じ部署のりささん(仮名・30歳)は私と同じ激務の環境にありながら、いつも明るく笑顔で仕事をしていました。ある日、世間話で「習い事したいけど時間がなくて……」と私が言うと、りささんは驚きの一言を口にしました。「実は、仕事しながら大学院に通うことにしたんだ」
上司からは「そっちに時間が取られるからやめてほしい。だいたい、それって仕事に関係ないよね」と反対されたそうですが、りささんは「でも会社だけが人生ではないですよね。自分がチャレンジしたいからやってみるだけです」と言いくるめました。そして見事に仕事と学業を両立し、数年後には卒業。学んだことを生かして希望の部署に異動したり、新しいプロジェクトを立ち上げたりと、今でもはつらつと働いています。
自分の人生を取り戻す
りささんの行動に触れた私は、自分で勝手に限界を決めていたことを痛感しました。「やりたいことはやらないと」と背中を押され、習い事を二つ始め、週末の会社イベントも思い切って断る勇気が持てました。少しずつですが、自分の人生を自分のために取り戻すことができたのです。激務の中で輝き続けるりささんの姿は、今でも私のロールモデルとなっています。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2016年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。