入社してすぐに体調を崩した新人
これは、会社員として働く友人Nの体験談です。
入社してまだ間もない頃、Nは38度の高熱を出してしまいました。
体は重く、歩くのも辛いほどの状態。Nは課長に電話をかけ「今日は休ませてほしい」と相談しました。
課長の冷たい一言
しかし返ってきたのは思いやりの言葉ではありませんでした。
「人が足りないから、とりあえず出社して!」
強い口調でそう言われた瞬間、Nは「新人だから逆らえないし、社会人としてそういうものなのか」と思ってしまったといいます。
結局、フラフラの体を引きずって出社することになりました。
会社に着くと、同僚たちはすぐにNの異変に気づきました。
「顔が赤いよ?大丈夫?」
「無理しない方がいいんじゃない?」
みんなが口々に心配する一方で、無理に出社を指示した課長は、まるで何事もなかったかのように知らんぷり。体調不良の部下を気遣う様子は一切ありませんでした。
部長の登場で空気が変わる
そんなとき、タイミングよく部長が現れました。
Nの顔を見るなり、驚いたように問いかけます。
「なんで出社してるんだ?そんなに辛そうなのに」
Nが「課長から出社するように言われて…」と事情を説明すると、部長の表情が一変しました。
「体調不良の部下を無理やり出社させるなんて、何を考えているんだ!」
その声はオフィスに響き渡り、周囲の社員たちも一瞬静まり返ったといいます。
部長の声は怒りを隠さず、課長の席まで歩み寄りながら続けました。
「部下の健康管理も上司の責任のうちだ!自分の都合だけで出社させてどうする!」
その場にいた社員たちは息を呑み、Nは初めて“守られている”と感じたといいます。
正論に救われた瞬間
部長は課長を厳しく叱責したあと、Nに向き直って優しく声をかけてくれました。
「今日は帰って休め。体調を整えることが一番大事だ」その言葉にNは安心し、ようやく肩の力が抜けました。
同時に「課長の理不尽さが白日の下にさらされて、本当に救われた」と胸のつかえが取れたのでした。
それ以来、Nは「体調が悪いときは無理をせず、正直に伝えることが大事だ」と思えるようになりました。
あの日の出来事は、自分を責めずに“休む勇気”を持つきっかけになったのです。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2020年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。