憧れの一人暮らし
第一志望の企業に就職が決まり、憧れの都内での一人暮らしを始めた私。駅前というよりは住宅地よりのアパートに住んでいました。駅前にはコンビニが何件もあり、けれど住宅街は夜は静かで、快適に暮らしていました。
ありえない量の残務処理
ある日、定時数分前に上司からかなりの量のデータ入力を命じられました。データ入力といってもかなり複雑なもので、4~5時間はかかりそうなものでした。21時からどうしても見たい番組があった私は”よりによってなんで今日…明日ならいくらでも残業できるのに!”と思いながら、断ることもできず、作業にかかりました。絶対に21時には帰宅したかったので、スマホはバッグに入れ、一心不乱に打ち込みました。
大量の不在着信
なんとか作業を終え、急いで帰宅しようとスマホを手に取ると両親、姉、祖母、友人から大量の不在着信。何事?!と急いで母に電話をかけると
「無事なのね?!本当に良かった」
と涙声の母。電話口を代わった父が教えてくれたのは驚愕のニュースでした。
私の住むアパートの数件先で、ストーカーが女性を殺害する事件が起き、その犯人であるストーカーが凶器であるナイフを持ったまま逃走中というもの。
幸いにも私が残業中に犯人は現行犯逮捕されたとのことでした。
家族や友人は逃走中の生報道を見て、心配して電話をかけてくれていたのです。
事件現場は同じゴミ集荷場を利用するほど近く、もし残業していなければ、逃走中の犯人に遭遇していたかもしれません。事件現場も、逮捕現場も私の住むアパートから目と鼻の先でした。
当たり前は当たり前じゃない
テレビで連日そのニュースが報道され、改めて自分が事件に巻き込まれなかったことに感謝しました。あの日もし残業を断っていたら。もしいつも通りに帰宅していたら。
当たり前は当たり前じゃない。そう痛感しました。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。