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ある日の出社途中、私に起こった出来事です。困っていた年配の女性に声をかけたことから始まり、思いがけない再会と胸が熱くなる瞬間につながりました。小さな親切の大切さを思い出させてくれる体験談です。

会社前で見かけた謎の女性

それは2年前、平日の昼下がりのことです。少し遅めの出社で会社に向かって歩いていると、スーツケースを持った年配の女性が道端を行ったり来たりしていました。立ち止まっては辺りを見回し、また歩き出す……その繰り返し。落ち着きのない様子に、正直「何かあったのかな?」と少し身構えてしまいました。

気になって声をかけると…

しばらくして、その女性は近くのバス停へ向かいましたが、時刻表を見て小さくため息をつき、また戻ってきました。私はその様子が気になって、つい目で追ってしまいます。何度も行ったり来たりする姿が心配になり、思い切って声をかけてみると、意外な事情を話してくれました。

「主人が手術することになってね、間に合うように病院に行きたいの。でも携帯電話を家に忘れちゃって……タクシーも呼べないし、バスはまだずっと先の時間で……」

迷わずお手伝い

話を聞いた瞬間、「これは助けないと!」と迷わず思いました。「私が電話しますよ!」と笑顔で答え、その場でタクシー会社に電話。数分後に到着したタクシーにおばあさんを乗せると、「ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言いながら出発していきました。その後、無事間に合ったのか気になっていましたが、なかなか会うことはありませんでした。

一週間後の感動の再会

そして一週間後。なんとそのおばあさんが、わざわざ会社まで訪ねてきたのです。受付で私を探し当てると、にこやかにこう言いました。「この前は本当に助かったの。おかげで手術にも間に合って、無事に終わったのよ。お礼が言いたくて……これ、受け取って」そう言って手渡されたのは、上品な包装の紙袋。

思わず「えっ、こんなの受け取れません! 本当にたいしたことしてないんです!」と慌ててしまいました。しかしおばあさんは首を横に振り、「あの時は本当に困っていたの。どうしても渡したかったの」と笑顔で押し出してくれました。
袋の中には、高級そうなお菓子の詰め合わせが入っていて、その温かい気持ちに胸がいっぱいになりました。当たり前のことをしただけなのに、こちらまで幸せな気持ちになりました。そして同時に、あの日一瞬でも警戒してしまった自分を心の中でそっとお詫びしました。

困っている人を見かけたら手を差し伸べる――子どもの頃は当たり前のようにしていたことなのに、大人になるとつい忘れてしまいがちです。あの日の出来事は、その大切さをあらためて思い出させてくれる、心温まる時間でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

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