丁寧で評判のTちゃん。でも、なぜか目をつけられる……
Tちゃんは、とある店舗に入って半年ほどのスタッフ。まだ新人とはいえ、真面目で丁寧な接客が評判で、常連のお客様から名前で声をかけられることもあるほど。ところが……そんなTちゃんに、毎日のように嫌味を言ってくる先輩がいました。
「それ、私が新人のときは1週間で覚えたよ?」
「お客様に話しかけすぎじゃない? しつこく思われたらどうするの(笑)」
「またその服? もっとおしゃれして出勤しなよ〜」
Tちゃんは何を言われても苦笑いしてやり過ごすしかなかったそうです。先輩は長くこの店舗に勤めているだけに、他のスタッフも強くは出られず、誰もがうまく距離を取っているような日々でした。
転機は突然に。エリアマネージャーの視察がやってきた!
ある日、エリアマネージャーが店舗視察にやってきました。店内は朝からピリピリムードで、皆がいつもより少し緊張気味。そんな中でもTちゃんはいつも通り。「丁寧で落ち着いた接客を心がけるだけです」と自然体で業務にあたっていました。
一方で、例の嫌味な先輩はというと……ここぞとばかりにテンション高めの声を張り、やたら目立とうと必死。空回りしてしまった結果、接客中のお客様からまさかの「ちょっと静かにしてもらえます?」という苦言が……。その瞬間、空気が一気に凍りついたそうです。
「Tさんの接客は素晴らしかった」評価を受けたのは……?
視察の後、エリアマネージャーが全員を集めてフィードバックを開始。「全体的に印象はよかったです。特に……Tさんの接客は素晴らしかったですね。声のトーン、距離感、商品説明、すべてがちょうどよく、非常に好感が持てました」
その場にいた全員がTちゃんを見る中、例の先輩は無言。目も合わせず動揺を隠しきれません。さらに追い打ちのように、マネージャーはこう続けました。「新人さん? いや、もうベテランスタッフとして通用する対応力ですよ。これからもどんどん活躍してほしいですね」
その瞬間、周囲のスタッフたちから自然と「やっぱりTちゃんって接客うまいよね」「前から思ってた」とフォローの声が続々。先輩は最後に「まぁ……そのくらいやってくれないと困るしね」と苦し紛れに強がったそうですが、その後は明らかにトーンダウン。以降、Tちゃんへの嫌味はピタリと止まりました。
遠慮なんて、もういらない
視察以降、Tちゃんの実力は周囲にしっかり伝わり、妙に遠慮したり萎縮したりすることもなくなったそうです。そしてTちゃんは後日「自分の努力や接客をちゃんと評価してもらえたことで、“ああ、ちゃんと見てくれてる人がいるんだ”って思えたんだ。黙ってやるべきことをやればいいんだなって」と語っていました。
【体験者:20代・販売員、回答時期:2015年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。