穏やかな職場に入った若手社員
Rちゃんが働いていたドラッグストアは、ベテランのパートさんたちが現場を回す、とても穏やかな職場でした。そんな中、新卒で入社したばかりの20代の男性社員が、ある日異動してきます。最初こそ「元気な子だな」といった印象でしたが、慣れてくるにつれてだんだんと態度が変化。
「パートは社員の指示に従うべきですよね?」「それ、昔のやり方ですよね?」「僕は社員なので、僕の方が立場は上ですから」……などなど、マウントとも取れる発言を繰り返すように。ベテランパートのAさん(勤続10年・誰もが認める仕事のできる人)が「みんなが萎縮しちゃうから」と何度か注意しても、全く聞き入れない様子。スタッフたちはモヤモヤが募るばかりでした。
店長が指導に入るも、反応は鈍く
あまりに高圧的な態度が続くため、スタッフたちは店長に相談。店長も男性社員に直接注意はしていたそうですが、若手社員はその場では黙っても、態度が変わる気配はなかったそうです。
Rちゃんによれば、店長もできる限りの声かけや指導はしていたとのこと。「Aさんや他のパートさんの言うことをちゃんと聞いて、学ばせてもらえ」と伝えていたそうですが、若手社員はどこかで自分が正しいと思い込んでいたようです。
トラブル発生! 頼りになったのは……
そんなある日、とある事件が発生します。あるお客様が別のお客様の商品をレジ袋に入れて持ち帰ってしまい、持ち帰られた側のお客様から「買ったはずの商品が入ってない!」とクレームが起きたのです。
対応にあたったのは、あの若手社員。焦りながら説明を試みるも、話が要領を得ず、お客様の怒りはヒートアップ。周囲もピリピリしはじめました。
その時、サッと現れたのがAさん。「お話、私からも伺ってもよろしいですか?」と落ち着いたトーンで話しかけ、状況を整理しながら丁寧に謝罪と提案を伝えます。わずか5分ほどでお客様の怒りは収まり、笑顔で帰っていきました。一方、若手社員はその場で放心状態……。
店長の一言に全員がスカッと!
トラブルが一段落したところで、トラブルの電話を受け急いで出勤した店長が現場に到着します。Aさんに「Aさんのおかげで助かったよ」と声をかけたあと、店長は若手社員に向かって一言こう告げました。
「このお店を支えてくれてるのが誰か、そろそろ分かってくれたか?」
その場にいたRちゃん含め、スタッフたちは心の中で拍手喝采だったそうです。
その日を境に、若手社員は少しずつ態度を改めるように。急激な変化ではなかったものの、Aさんや他スタッフへの口調や接し方が明らかに変わったのだとか。いくら社員だからとはいえ、場数を踏んできたベテランから学ぶことも多いもの。どんな立場でも、いつも謙虚な気持ちが大切なのかもしれません。
【体験者:30代・販売員、回答時期:2023年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。