ホームセンターの木材カットサービス
私が働いていたホームセンターには、日用品を販売している本館と、資材用品を扱っている資材館があります。資材館には木材カットのサービスがあって、そこに購入した木材を持って行くと、希望に合わせてカットすることができるのです。
ピッタリ以外認めないお客さん!
ある日、木材を購入した男性のお客さんが「このようにカットして欲しい」と、図が描かれた紙をカウンターに持って来ました。
「かしこまりました。全て機械ではなく、手作業で行う部分もあるので、1mm前後の誤差は生じてしまいますがよろしいでしょうか?」とご案内。
すると、みるみるうちにに表情が変わる男性。持参した紙を地面に投げつけ、声を荒げます。
「はあ? ぴったりカットしろよ! こっちはぴったりしか欲しくないわけ! なんで誤差が生じるんだよ! あんたプロだろ!」
「申し訳ありません。カットは機械ですが、セットと長さを測定するのは手作業なので……」と私が伝えると、「お前使えねえな! ぴったりカットできる人を呼べ!」とヒートアップ。
お客さんがカットをするが……!?
すぐに上司を呼んだのですが、上司も同じ説明をするしかありません。男性は、「この店の従業員は全員無能なんだな!」と大声を上げ、怒りは一向に納まりません。
そこで上司が「申し訳ございません。工具の貸し出しは可能でして、お客様自身でカットもできるのですが、全て手作業になってしまいます……」と男性に提案しました。
「それが一番正確だろ! とっとと貸し出し用の工具を渡せ!」と言うので、工具を渡します。
カットが終わり、男性が長さを測って確認をすると……想像以上に誤差が大きく、さっきまでの態度とは打って変わって、何も言わずに固まってしまいました。
私が声をかけようとすると、「……新しい木材を買ってくるので……カットお願いします」と、男性は深々と頭を下げ、早足で売り場に向かって行きました。
その立場になって気付けること
立場や状況によって無理な要望を言っている自覚がなくなってしまうこともあるもの。木材の出費がかさんだことは申し訳なかったですが、実際に自分でやってみて気付けることもあると感じた出来事でした。
【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2021年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。