地元で始めた3人暮らし
離婚して2人の幼い息子を連れて故郷に戻ってきた私は、すぐに実家に住むことができませんでした。当時、実家では妹が受験生で、静かな環境が必要だったからです。そのため、妹の受験が終わるまでの間、私は子ども達と3人でアパートを借りて暮らすことにしました。急いで決めた物件は、1DKの小さなアパート。知り合いも多い地元での生活は忙しくも楽しく、久しぶりに笑顔の多い毎日が戻ってきたように感じていました。
夜になると聞こえる音
新生活に慣れてきた頃、ふと気になることが起こり始めました。夜になると、天井から「ドンドン」と足音のような音が聞こえるのです。最初は上の階の住人かと思っていましたが、実は2階は空き部屋。それに気づいてからは、少しずつ他の現象も起き始めました。閉めたはずのドアが勝手に開いていたり、誰もいないキッチンの方から「ミシッミシッ」という足音が聞こえたり。子ども達も「怖い」と言う日が増え、私も不安を隠せなくなっていました。
地図で見たアパートの位置
ある日、実家に立ち寄った私は母と祖母に相談。すると祖母はすぐに、「それならここじゃなくて、お寺に相談してきなさい。話はしておくから」と。祖母が昔からお世話になっているお寺を訪ねると、住職さんはアパート周辺の地図を広げ、何やら難しい顔をしながらこう言いました。「あなたが住んでいるアパート、ちょうど霊道の上にあるね」
霊道とは、霊が通る道のこと。お寺と神社を直線で結んだライン上に建っている建物は、霊の通り道になり、頻繁に霊障が起きることがあるそうです。「今のところ、悪さをするような霊じゃないから大丈夫だと思うけど、気になるなら引っ越した方がいいかもしれない」とも言われました。けれど、当時の私には引っ越す余裕などなく、すぐに移ることはできません。
祖母から渡された数珠
事情を聞いた祖母は、念を込めたという数珠を私に貸してくれました。「寝るときは、これを近くに置いておきなさい」と。それからというもの、天井の足音は以前ほど聞こえなくなり、キッチンの足音も少なくなった気がしました。何かが完全に消えたわけではないのかもしれないけれど、少なくとも、守られているような感覚があり、安心して眠れるようになったのです。
物件選びで大切なこと
妹の受験が終わる頃、私たちは無事に実家へ戻ることができました。あのアパートには感謝の気持ちもありますが、あの体験があったからこそ、次に住む場所はもっと慎重に選ばなければと強く思いました。間取りや家賃も大切ですが、見えない何か――例えばお寺と神社との位置関係なども気にした方がいいのかもしれません。あのアパートで過ごした日々は、静かだけど確かに”何かがいた”と思わせる不思議な思い出として今も残っています。
【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。