深夜のファミレスで起き始めた“異変”
これは、友達のMちゃんが学生時代にバイトしていたファミレスでの話です。その店舗は深夜営業もしていて、夜はいつもスタッフ数がギリギリ。注文もクレームも同時多発で、バタバタと戦場のような現場でした。そんな中、ある時期から「ドリンクバーのあたりに誰かいた気がする」「誰も座ってない席で何か動いた」といった、不思議な話がポツポツ出始めたそうです。最初は誰も気にしていなかったものの、夜勤スタッフの間では「ドリンクバーの幽霊、今日もいたね〜」と、ちょっとした小ネタ扱いに。新人バイトが怖がっても、「ドリンク補充とオーダー対応で忙しすぎて、それどころじゃないから!」と、先輩にバッサリ言われ、次第にスルーする術を身につけていったといいます。
カメラに映った“黒い影”
ところがある日、社員が閉店後に監視カメラをチェックしていたところ、はっきりと“黒い影”がスッとフレームを横切る瞬間を発見。カメラの死角ではない位置だったこともあり、「これ、マジで誰?」と社内がざわつき始めました。Mちゃんたちは「見ちゃったら無視はできないよ……」と不安になり、ついに店長に報告。「こういうのってちゃんと報告しといた方がいいと思うんですけど……」と恐る恐る相談したそうです。
店長のまさかの返答
Mちゃんたちが真剣な面持ちで相談する中、店長の返事はというと——「うーん……売上落ちてないし、別にいいんじゃない?」という、想像の斜め上をいくノンストレスな一言。「いやいや! 怖いって声も出てるんですよ!」と食い下がっても、「でもさ、モノ壊されたり客に被害出てるわけでもないし。クレームも来てないしさ。いるならいるで、共存でいいんじゃない?」とのこと。Mちゃんたちも店長言い分に言い返せず「まぁ…確かに実害ないけどさ…」と納得(?)するしかなかったそうです。
幽霊よりもリアルな恐怖
そんなやりとりの後、現場では「黒い影=常連さん説」が広まり、ドリンクバーの補充中に「今日も来てたよ」なんて話が普通に飛び交うようになったとか。Mちゃんいわく、「この店では幽霊より生きている人間のクレーマーの方が怖かったし、人手足りない日のシフト表の方がゾッとした」とのこと。もはや“出る・出ない”は大した問題ではなく、現場にとっては「忙しさと平和な営業を守ること」のほうがずっと大事だったのでしょう。
【体験者:10代・飲食店、回答時期:2010年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。