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「1分1秒が惜しい」。編集者にとって、締め切り前とはそういう状況です。原稿のチェック、著者とのやり取り、デザイナーへの指示……ただでさえ慌ただしいのに、そこへ割り込んでくる“時間泥棒”がいるから困りものです。今回は、筆者が出版社で編集の仕事をしていた頃に経験したエピソードを紹介します。

電話=体力勝負?

出版社で編集の仕事をしていた頃の話です。毎回「電話って、こんなに体力を使ったっけ?」と思わされるクライアントがいました。

相手の名前がスマホに表示された瞬間、「あ、これは長くなるな」と察するけれど、スルーする勇気が出ないのが編集者の悲しき性。その日も締め切り前の忙しい時間帯に携帯が鳴り、「……出たら間に合わなくなる」と思いながら、つい通話ボタンを押してしまったのです。

始まりは5分、そこから1時間

「ちょっとだけ確認したいことがあってさ〜」というお決まりのセリフ。実際の確認は5分で終了。ここまでは良かったのですが、問題はそのあとです。

「最近、うちの新人が『逆に』を多用しててさ、気になっちゃうんだよね」「そういえばさ、あの業界の〇〇さん、今何やってるか知ってる?」「この前読んだ本がさ、初心にかえる感じが良くてさ〜」「昔一緒に仕事したライターさん、最近どうしてる? ほら、あの人、某社との契約でちょっとトラブってたでしょ」

話が止まりません。はじめは情報交換のようにも思えましたが、私の返事も待たずに矢継ぎ早にどんどん展開していくトーク。こちらの状況などお構いなしに、雑談という名の独演会が繰り広げられていきます。

マルチタスクで戦う編集者

電話の向こうで繰り広げられるトークライブをBGMに、私はというと、左手では原稿に赤ペンで修正指示を書き込みながら、右手ではPCで急ぎのメールを返信中。電話で話しつつ、赤字で修正を書きつつ、メールも打ちつつ。まるで何かの修行のよう……。

内心では「お願いだから早く終わってくれ〜」と叫んでいますが、口から出るのは「へえ〜、そうなんですねぇ」の相づちだけ。編集者になって培ったスキルのひとつ、「ながら電話芸」が全開です。

電話が終わると、午前も終わっていた

ようやく電話が終わり、ふと時計を見ると……もう昼前。「あれ、さっき10時台だったのに?」と目を疑うレベルの時間泥棒。締め切り前というのは、ほんの5分のロスでも命取りになるもの。なのに、まさかの1時間ロスです。

こっちは時間と戦っているというのに、電話越しには余暇が流れている。本当に、編集者にとっての天敵は「気軽な長電話」なのかもしれません。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024月9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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