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全国に店舗がある会社では、遠方への転勤も覚悟しておかなければなりません。店長としての異動準備に追われるさなか、自分のもとを訪れた青年。でもそれは思いがけない再会で……。筆者がスーパーの店長を務める知人から聞いた、突如現れた訪問者にまつわるエピソードを紹介します。

異動先は600キロ先

スーパーの店長になって約6年。2年ごとの異動を繰り返し、今回で3回目の異動です。これまではすべて通勤圏内で、生活スタイルも大きく変わることなく乗り越えてきました。

けれど今回の辞令は違いました。次の店舗は、なんと今の場所から600キロも離れた土地。引っ越しの準備に、新店長との引継ぎ、さらには住まい探しまで、心身ともにバタバタな日々が続いていました。

突然の訪問者

そんな慌ただしいある日、スタッフが「店長に会いたいという男性が来ています」と声をかけてきました。てっきり新店長との面談かと思ったのですが、それはまだ先の予定。誰だろう? と不思議に思いつつ売り場へ向かうと、そこには20代後半と思しき爽やかな青年が立っていたのです。

「お久しぶりです! 異動になると聞いて、いてもたってもいられなくて来てしまいました!」
いきなりの言葉に戸惑いながらも、彼の笑顔にどこか見覚えが……。しかし、どうしても思い出せない。すると彼は続けました。「あの時は面接していただき、ありがとうございました!」と。

思いがけない再会の理由

「面接?」と首をかしげながら話を聞いているうちに、うっすらと記憶がよみがえってきました。彼は、前の店舗で私が採用面接をした青年だったのです。ただし彼の採用が決まった直後に私が異動になったため、一緒に働くことはありませんでした。

それでも彼は言いました。「僕、ずっとまともに仕事に就けなくて、自信を失っていたんです。どこの面接に行っても、履歴書を見た段階で“ダメだな”って呆れた顔をされていました。でも店長さんは、履歴書よりも僕自身を見てくれて。『これからどうなりたいか』を聞いてくれたのは、店長さんだけでした。すごく嬉しかったんです」

(そんな思いで面接に来てくれていたんだ……)
あの短い面接の時間が、彼にとっては人生を前に進める大きな一歩になっていたのです。

再会が教えてくれたこと

「店長さんが面接してくれたおかげで、僕は今も仕事を続けられています。人生を変えてくれてありがとうございました!」そう言って深々と頭を下げ、彼は帰っていきました。

私にとっては、数ある面接の一つに過ぎなかったかもしれません。けれど彼にとっては、それが人生の分岐点。

人と関わるということは、時に思いがけず誰かの未来に触れるということ。私はこれから新たな街で、またたくさんの人と出会うことになります。彼との再会によって、改めてひとりひとりと真摯に向き合っていく大切さを感じ、背筋が伸びるような思いに。彼の言葉を噛みしめながら、新天地への一歩を踏み出したいと思います。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

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