出てこない試着室
先日のこと。掘り出し物を探してふらりと立ち寄ったリサイクルショップは、週末とあって賑わっていました。なかでも混雑していたのが、店舗の一角にある試着室。
店には「試着は一度に3着まで」のルールが掲げられていて、私も試着室の空き待ちの列に並んでいたのですが、一つの試着室からなかなか人が出てこないのです。私の後ろにも待っている人が増えて列がどんどん伸びているのに、そのカーテンは一向に開かず、時間にして30分以上が経過していました。
試着室内で撮影会
さすがに様子がおかしいと感じたのか、若い女性の店員さんが、控えめな声で「すみません、お待ちのお客様がいらっしゃるので……」と試着室に声を掛けました。
すると中からは、「パシャ、パシャ」とスマートフォンのシャッター音が。それに続いて、「あっ、ちょっと待ってください、今、撮ってて……!」という焦った声。
どうやら中にいたお客さんは、何着もの服を次々と試着して自撮りをしていた様子。ネットに載せるのか、友達に送っているのかは謎。でも、30分というのは「購入前提でちょっと試す」というレベルを超えている気がします。
注意する店員さん
店員さんは困ったように笑いながらも「申し訳ありませんが、他のお客様のご迷惑になりますので……」と再び丁寧に伝えると、そこでようやくカーテンがオープン。中から若い女性が、スマホを手にむすっとした表情で出てきました。
結局その若い女性は注意され、軽く舌打ちしながら店を後に。後ろで並んでいた人たちは呆れたように目を合わせ、ため息をついていました。
マナーもセンスのうち
服は「映え」たかもしれないけれど、マナーは完全にアウト。リサイクルショップは一期一会の出会いが楽しい場所です。試着は自由だけれど、その場に合う振る舞いを選ぶセンスも一緒に持ち合わせていてほしい。私はそんなことを思いながら、自分の順番を静かに待ったのでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025月5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。