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調剤薬局で働いていた頃のこと。閉局間際に訪れた、言葉の通じない外国人の患者さん。患者さんの曇っていく表情に、対応するこちらも不安が募りに募り……。今回は、言葉を超えたコミュニケーションの大切さを改めて感じたエピソードを紹介します。

閉局間際の来局者

薬局で働いていたある日のこと。忙しかった一日がようやく終わり、閉局作業に取りかかろうとしたそのとき、入口の自動ドアが開きました。

入ってきたのは、外国人の男性。手には処方箋を持っていましたが、日本語はまったく通じない様子でした。

言葉の壁に、立ち尽くす

男性は不安げな表情を浮かべ、戸惑いながらカウンターに近づいてきました。私は英語がまったく話せず、用意してあった英語の問診票を渡すのが精一杯。しかし、保険証の確認もできず、氏名の読み方すらわかりません。

「現在飲んでいる薬は?」「アレルギーは?」「これまでの病歴は?」確認すべき項目はたくさんあるのに、英語でのやり取りは思うように進まず、身振り手振りでは限界がありお手上げでした。

処方元の病院に連絡を試みましたが、すでに診療時間は終了。確認が取れないままでは、薬をお渡しすることはできません。

手に取ったスマホ

「申し訳ありません」、そう伝えようとしたそのとき、ふと思いついたのです。「あ、翻訳アプリがあるかも!」と。

すぐにスマホを取り出し、音声翻訳を起動。すると、片言ながらも意味が伝わり始め、男性の表情からも安心した様子が伺えるようになってきました。

そこからは、服用中の薬やアレルギーの有無、保険証の説明などを一つずつ丁寧に確認。多少時間はかかったものの、最終的に必要な情報をすべて把握でき、安全に薬をお渡しすることができました。

翻訳アプリと、安心を届けた夜

無事に薬を受け取った男性は安堵の笑顔を見せ、私に深々とお辞儀をしてくれました。薬局を後にする男性の姿に、私も心の底からほっとしました。

そして思わず「翻訳アプリって、すごいなぁ」とつぶやく私。同時に、「やっぱり、英語は少しでも話せたほうがいいな」とも感じたのです。たった一人の不安を少しでも和らげるために、自分にできることはまだまだあるかもしれない。そんなことを改めて考えさせられた出来事でした。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2019月7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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