体調不良の接客スタート
私が東京の下着屋さんで働いていた、ある日のこと。
その日は、出勤したときはいつも通りだったのですが、勤務中にだんだん体調が悪く……。(もしかして、生理が近いから?)笑顔を作ってもぎこちない状態になってしまいました。そんな中、お母さんと背の高い娘さんの親子が店に入ってきました。
修学旅行のパジャマを選びにきた母と娘
親子で店内をゆっくりと回ったあと、お母さんが私に「娘の修学旅行に持っていくパジャマが欲しいんです」と話しかけてきました。私は体調が悪いなりに精一杯の笑顔で商品を案内。
一旦は説明を終えて親子のもとから離れたものの、その後もお母さんは私に何度も話しかけてきます。私は正直「ヒ〜ッ」と思いながらも対応。傍から見れば無愛想な店員に見えてしまったかもしれません。
しかし、お母さんはそんな私の態度を全く気にする様子もなく、積極的に話しかけてきてくれたのです。
驚きの正体判明
購入商品を決めてレジに来た親子。私はそこでようやくお母さんの顔を直視したのですが、顔を見てびっくり! なんと、そのお母さんは超有名な歌手だったのです。
それでも驚いて話しかけるのは失礼だと思い、私は気づかぬふりをしたままレジを済ませ、お母さんへ商品のお渡しをしました。すると、お母さんは笑顔でこのように話してくれたのです。
「お姉さん(=私)、ちょうどいい距離感ですごくお店が見やすかったの。ほら……私が誰かわかると、結構話しかけてくる人も多いから」
新たな接客スタイルの発見
その日までは知らなかったのですが、実はお店のある場所は芸能人が多く住んでいるエリアだったのだそう。この一件の後にも頻繁に芸能人が訪れていました。
体調が悪く普段より元気のない接客だったにもかかわらず、奇跡的にそのお客様にはピッタリだったという今回の出来事。私はこの経験で初めて、あっさりとした接客を好むお客様もいるのだということを学びました。それ以降、私はお客様の初動の雰囲気を観察し、接客スタイルを柔軟に変えるように心がけています。
【体験者:20代・販売員、回答時期:2012年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。