閉店準備
私が勤めていたホームセンターは、勤務はシフト制で、早番と遅番がありました。閉店作業は遅番の正社員の他に、サービスカウンターのパートも閉店まで残って一緒に行うことがありました。閉店30分前になると、使用しないレジから順番に売り上げ金の回収をするので、閉店時間ギリギリまで使用できるレジは、中央の有人レジのみでした。
また、ここのお店では閉店10分前になると、蛍の光が流れます。ところが、蛍の光が流れてから走って店舗に入ってくるお客さんもいました。
閉店ギリギリに入店するお客さん
その日も、蛍の光が流れてから1人の男性客が慌てて入ってきました。その男性は、店舗奥のペット売り場まで走って行き、なかなか中央のレジに来ません。
副店長が閉店アナウンスと、「お買い物がお済みでないお客様は至急、中央レジまでお願いいたします」と店内アナウンスをしましたが、それでも男性はレジに来ません。
男性のお客さんの正体は……!?
「店内アナウンスをしたのにレジに来ないから、ペット売り場を見て来てくれる?」と、副店長の指示で従業員が様子を見に行きました。すると、男性は閉店のアナウンスが流れたにも関わらず、金魚用品を手に取り、どちらを買おうか真剣に悩んでいました。
「お客様、閉店時刻となりましたので、ご協力をお願いいたします」と従業員が声をかけると、「うるさい! 俺は今真剣に悩んでるから話しかけるな!」と、大声で怒りだしました。従業員が困っていると、そこにサービスカウンターの女性パートがやって来ました。
そして、「あら〜大声出して誰かと思えば、同じ町内会の伊藤さん(仮名)じゃない! そんなに大声出してどうされました?」と男性に声をかけると、「新しく金魚を飼おうと思っていて、金魚用品で迷っていまして……」と気まずそうに答えます。
「わ〜そうなのね! そしたらしっかり悩んで決めたいわね! でももう今日は閉店なんですよ〜。明日もお店開いてるので、明日ゆっくり選ぶのはいかがですか? ペット担当もいる時間なら詳しく聞けますよ!」と笑顔で女性パートは言いました。
男性はそんな正論に何も言い返せず、急いで商品を売り場に戻すと、「失礼しました」と言いそそくさと退店して行きました。
機転の良さ
退店しないことを直接問い詰めるのではなく、相手の気持ちに寄り添った提案により、お客さんのプライドを傷つけず、トラブルが大きくなることも防ぐ。女性パートの機転の良さに感激した出来事です。
【体験者:20代・主婦、回答時期:2022年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。

