100円ショップでの仕事
田中さんは100円ショップで、パートとして勤務していました。業務内容は様々で、レジ打ちに品出し、売り場作成など幅広い業務を担っていました。
接客業は大変なこともありましたが、お客様の「ありがとう」という言葉が何よりも嬉しくて、やりがいを感じていたそうです。
意外な職業のお客さん!
ある日、1人の男性客が化粧品売り場にいるのを見かけました。
最近は男性でもメイクをするため不思議に思いませんでしたが、田中さんが売り場の横を通るたびに同じ棚を見ています。
「何か困っているのかな?」と田中さんが声を掛けようとした、その時でした。男性客が田中さんの姿に気付き、「すみません、少し教えていただきたいのですが」と声をかけてきたのです。
「実は私は納棺師の仕事をしておりまして、亡くなった方のお顔に化粧をしています。ファンデーションで肌が綺麗にみえる物を探しているのですが、こちらの商品はどうでしょうか?」
男性客はそう言いながら、真剣な眼差しで田中さんの顔をじっと見つめています。
田中さんはすかさず男性客の持っていた商品を確認し、「そちらの商品は、マスク着用時に肌荒れを防ぐ効果が高い物になります。こちらの方が、お求めの物に近いと思いますよ」と、丁寧に答えました。
男性客は田中さんの丁寧な対応に安心したようで、質問を続けます。
「ありがとうございます。ちなみにこれは長時間、綺麗さをキープできますか? その辺りも詳しく教えていただきたいです」
田中さんがその一つひとつに丁寧に答えていくと、しばらくしてぴったりのファンデーションが見つかったのです。島田さんは喜びお礼を言うと、その商品を購入し笑顔で帰って行きました。
田中さんを探していた理由!
その2週間後、田中さんが出勤すると、「いたいた!」と言いながら駆け寄ってくる男性がいました。それは、以前ファンデーションを一緒に探した男性客だったのです。
彼は田中さんのところまでやってくると、穏やかな笑顔でこう言いました。
「実は先日、田中さんに選んでいただいた商品がとても良くて、遺族の方も喜んでいました! 田中さんに対応していただいて良かった!」
そして、「お礼をどうしても直接伝えたくて。あの後、何度かこちらの店舗に足を運んだのですが、なかなか見つけられなくて。だけど、今日お礼を伝えられて良かったです」と言ってくれたのです。
心温まるエピソード
田中さんはその男性客の話を聞き、店舗での接客を通じて、間接的に遺族の方の役に立てたことをとても嬉しく思いました。
また、男性客が丁寧に感謝を伝えてくれる姿に、「やっぱりこの仕事をしていて本当に良かった!」と思ったそうです。
【体験者:20代・女性パート、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。