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これからご紹介するのは、筆者がイタリアンレストランでアルバイトをしていた時に経験したお話です。ある時、客足の少ないその名店に、1人の男性客が初来店されました。食へのこだわりが強い質問をいくども投げかけてくるその態度に一見、面倒なお客さんかと思いきや……!?

イタリアンレストランでのアルバイト

私の仕事はホールスタッフで、お客さんのオーダー取りや食器の片付け、店内の清掃作業がメインの仕事内容でした。店自体はシェフの腕前も確かで従業員の対応も良く、私は楽しく仕事をしていたのですが、たった1つ問題があったのです。

それは、『客入りが思うようにいかない』ということでした。

店の営業時間は11時から22時まで。店内もかなりの広さがある店舗でしたが、店自体が畑に囲まれた立地で人目につきにくいところにあるためか、お昼時と夕食時の数時間以外はほとんどお客さんが来なかったのです。

質問が多いお客様

そんな問題を抱えていた中のある平日の午後のことでした。客足の途絶えた14時頃、ある男性のお客様が1人で来店されたのです。

男性客が着席してしばらくすると、私が呼び止められました。
「はい、大変お待たせ致しました。ご注文がお決まりでしょうか?」と私は笑顔で答えました。

しかし男性客は、「あなたを呼んだけど、実はまだ注文は決まっていないんです」と一言。
私はその言葉の意味を考えていると、男性客はメニューを開き、矢継ぎ早に質問を投げかけてきました。

「これはどの様な味つけですか?」
「食材はどこ産でしょうか?」
「男性に人気のメニューはどれですか?」

その質問内容はどれも『こだわりの強いお客さん』を印象付けるもので、私は彼の機嫌をそこねることがないように、と内心かなりあせりました。そのため、その場で答えられない質問にはその都度、シェフのいるキッチンへ確認しに行き、テーブルへ戻ってお答えするという対応を取ったのです。

私が全ての質問に答え終わると、男性客はこう注文を続けました。

「色々答えてくれて、どうもありがとうございました」
「僕、辛い物は苦手なんだけれど、このアラビアータがどうしても食べたいんです。すみませんが、辛さを最小限に抑えて作ってもらうことはできますか? そしてデザートに、この栃木県産の苺を沢山使ったパフェをお願いします」

満足いく回答が得られたためか、男性客のその穏やかなその口調に私は安心感を覚えつつ、注文内容をシェフに伝えました。そしてシェフは見事に要望に応えた料理を作り上げ、男性客は大満足の表情で退店していったのです。
しかし1つ不思議だったのは、帰り際に男性客が自分の名前を金子(仮名)と名乗っていったことでした。

1本の電話

その数日後、驚きの出来事が起こりました。「従業員の対応や、料理の味を大変気に入った」とのことで、金子さんから「1ヶ月後の〇月〇日に、1日店舗を貸し切りにして欲しい」と電話があったのです。
予約内容を伺うと、「50名以上の大切なゲストの招待を予定した、パーティーを開催したい」ということでした。その際は豊富な料理の数々だけでなく、お酒などの飲み物やデザートも出してほしいということで、予算の上限に希望はなく、相談の上決めたいとのことでした。

この電話で発覚したのですが、金子さんはなんと地元ではかなり有名な、とある大企業の社長だったのです。

金子さんのすさまじい影響力!

パーティー当日、美味しい料理や飲み物の数々にゲストの皆さんには大満足いただいたようで、その時の感想を金子さんがSNSに投稿してくれました。わくわくしながらその投稿を見てみると、なんと金子さんのフォロワー数は驚きの10万人越え。

それから間もなくすると、嬉しいことに「金子さんのSNSを見て、気になったので来ました!」というお客さんが次々と来店されるようになり、店はどんどんと賑わっていったのです。

初めて金子さんとお会いした時は質問が多く、気難しいお客様かと思いました。
しかし、実際は穏やかな紳士で、その後はお得様として来店してくださるように。

この素敵なご縁が繋がったのも、その場の印象だけで人を判断をせず、従業員皆で丁寧に対応したことが報われた結果だと思います。
厳しい経営状況にめげず、真摯に働くことの大切さを心から感じられた貴重な経験でした。

【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2017年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。

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