パワハラ上司と仕事をすることに……
仲の良い先輩のAさんは、当時入社10年目を迎える、社内でも信頼されている客室乗務員でした。
そんなAさんに、パワハラで有名な上司とのフライトが入ってしまいます。その上司は、日頃から部下に「どうしてそんなに仕事ができないの!」「やる気がないなら、フライトする資格はない」というような暴言を吐くことで有名な人で、直属の部下にも退職者が後を絶たないほどでした。
フライトを控えたAさんは、前日から憂鬱で胃が痛くなる思いでしたが、「今回だけで終わりだから我慢しよう」と腹を括って出勤しました。
やはり評判通りのパワハラが炸裂
いざ仕事が始まると、やはり上司のパワハラ節は炸裂。
「どうしてそんな事をするの!」「手際が悪い!」と暴言が続きます。Aさんは、日頃から同僚に仕事ぶりを認められていました。その日もミスはなく、仕事が遅れているわけでもありません。わけもわからず叱られているような状況が続きました。
「早くこのフライトが終わってくれ……」と心から祈っていましたが、祈りとは裏腹に上司の怒りはヒートアップ。最終的には、なんとお客様の目の前で「新人からやり直せ!」と怒鳴られてしまったのです。
フライトが終わった数日後に、信じられない出来事が!
大変だったフライトをなんとか我慢して終わらせた数日後、Aさんは会社の人事部から連絡を受けます。
普段は人事部と接点などないので何事かと思いつつ、話を聞いてAさんは驚愕。「先日のフライトであったパワハラ上司の暴言を、研修教材の題材にしてもいいか」というのです。
Aさんは理不尽な上司を「なんとかならないものか……」 と思っていたため、もちろん快諾。ただフライトでの出来事は口外していなかったので、なぜそれを人事部が知っているのかと不思議でした。
実は先日のフライト後、上司が怒鳴っていた様子を見かねたお客様が会社に通報してくれていたのです。Aさんは、フライト中のしんどい思いを引きずっていたため、そのことを知って少し報われた気持ちになると同時に、報告してくれたお客様にも感謝の気持ちでいっぱいになりました。
まだまだスカッとは続く
Aさんのスカッとエピソードはまだまだ続きます。
後日Aさんは、自分自身が受けたパワハラを題材にしたハラスメント研修を受けに行く機会がありました。するとそこに、Aさんを怒鳴りつけたあのパワハラ上司も出席していたのです。
Aさんは内心「よく研修内容を見ておけよ……」と思いつつ、上司に「先日はどうも大変お世話になりました」と声を掛けました。
そして研修がスタート。「こんな行為はハラスメントになるのでやめましょう」の実例として、当然ながら先日のフライトの話が挙がります。Aさんはすかさずパワハラ上司の方を見ると、上司はとても気まずそうに下を向いて俯いていました。
研修の終了後には上司も観念したようで、Aさんに対して「こないだの件は私が悪かったわ」と謝罪をしにきたのでした。Aさんは「思い知ったか!」と心からスカッとしたのだそうです。
【体験者:40代・会社員、回答時期:2023年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:阿川香織
日系航空会社で国際線・国内線の客室乗務員として勤務。現在は退職し、乗務員時代に得た知識や出会ったお客など、女性ならではの視点でコラムを執筆。子育てに奮闘しながら、女性を言葉で元気づけたいと精力的に情報発信をおこなう。