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だれしも、思いがけないトラブルに見舞われてしまうときがあります。そんなときこそ、人間性が出るもの。今回は、私が調剤薬局で働いていたある真夏日に起きた、心に残るエピソードをご紹介します。

開局してすぐ、突然の停電

その日は朝からうだるような暑さで、気温はぐんぐん上がり、真夏日を記録していました。汗をぬぐいながら、いつものように出勤。

業務を開始して間もなく、突然薬局内が真っ暗になってしまいました。周辺のお店を見てまわりましましたが、電気が消えているのはうちの薬局だけ。電力会社に確認すると、どうやら配線の不具合があったようでした。スタッフ同士で「これじゃ仕事にならないよね。一応、本部に確認してから今日は帰ろう」という話になりました。

「薬は渡せるから業務を続けて」

ところが、本部の上司の返答は思いがけないものでした。

「電気が通ってなくてもお薬は渡せるからね。暗くなる前に帰っていいから、夕方までは業務を続けて」

ということで仕方なく、そのまま業務を続けることになりました。

やがて患者さんが訪れ始めるのですが、なにしろ真っ暗な薬局です。「やってますか?」と恐る恐る入ってくる異様な光景に、スタッフも患者さんも思わず笑ってしまうような空気が薬局内に漂っていました。笑うしかないという感じだったかもしれません。

汗だくで奮闘するスタッフに患者さんは……

局内は蒸し風呂のように暑く、患者さんもスタッフもみんな汗だく。暗闇の中、懐中電灯で手元を照らしながら、二人一組で薬の数を確認し、声を掛け合いながら調剤を行うという、まさに全面協力体制。

そんな私たちの様子を見て、患者さんたちが次々と差し入れを持ってきてくれたのです。冷たいお茶、ジュース、アイス。気遣いの言葉に救われながら、スタッフは誰も文句ひとつ言わず、むしろ笑い合いながら目の前の業務に集中していました。

疲れたけれど、絆が生まれた日

夕方、ようやく電気が復旧すると、薬局にはいつもの日常が戻ってきました。スタッフ全員ぐったりしているはずなのに、なぜか顔には達成感と清々しさが溢れていて、自然と笑い声がこぼれていました。

とんだ災難ではありましたが、人の優しさやスタッフ同士の絆、そして電気のありがたさを深く感じた、忘れられない1日となりました。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2021年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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