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間違って購入したり必要がなかった場合、お店に返品をお願いすることがありますよね。私の働く店では、返品を受けるときは基本的に理由を伺うことになっています。けれど、「そんな理由だったの!?」なんて驚いてしまう理由もあったりします。今回は筆者本人が遭遇した、そんな返品にまつわる切ないお話。

返品希望の女性客が来店

退勤時間が近づいてきた夕方4時半頃。仕事帰りのお客さん達のレジ対応をしていた私の元へ、あまり見かけない60代くらいの女性がやってきました。「タバコかな? それとも商品の場所を聞きたいのかな?」そう思い声をかけると、女性は静かに「あの、返品してほしいんですけど……」と一言。
返品を受け付けるルールとして、購入から2週間以内でレシートがあることと、再販できる状態であること。そして返品の理由にもよります。

ラッピングされたプレゼント

女性が差し出したレシートの日付はギリギリ2週間前。「商品を確認させてください」と伝えた私に、女性は持っていたバッグの中から袋に入った商品を取り出しました。見てみると、プレゼント用にラッピングされたものが……。
「開封はされていませんね」私が聞くと、「受け取って貰えなかったので開いてません」とさらに静かな声で話す女性。(事情が気になるけど、これは知らない方がいいかもしれない。)そう思い、「それでは返金しますのでお待ちくださいね」と返品作業へ入りました。

静かに話し出す女性

その間、女性は独り言のようにプレゼントが必要ではなくなった理由を話し始めます。さっきまで他のお客さんで賑わっていたのに、なぜかその時だけは誰もいない。自ずと女性の声は私の耳に入ってきました。返品作業が終わりお金を渡すと、静かに頭を下げて帰っていったのです。

切ない返品理由

プレゼントを渡す相手は女性のお母様。介護施設に入って初めての誕生日にマグカップを渡す予定だったとのこと。けれど、誤嚥がきっかけで肺炎になり……。誕生日を待たずに亡くなってしまったそうです。しかもこの日が誕生日。
何だかもう、いたたまれない気持ちになってしまいました。

気休めにしかならないかもしれませんが、私はその女性の話に耳を傾けて、静かに相槌を打ち続けました。女性は誰にもこんな話をできないので、私にしてきているのかもしれません。

最後には「こんな話をしてごめんなさいね。いろいろ落ち着いたらまた利用させてね」と言って女性は帰っていきました。

返品はお店として嬉しい作業とはなかなか言えません。人によっては、あからさまにムッとする店員さんもいます。ですが、事情は人それぞれ。返品の作業だって、丁寧に対応していかないとなと思った出来事でした。

【体験者:40代・女性パート、回答時期:2025年2月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:hiroko.S
4人を育てるママライター。20年以上、接客業に従事。離婚→シングルマザーからの再婚を経験し、ステップファミリーを築く。その経験を生かして、女性の人生の力になりたいと、ライター活動を開始。現在は、同業者や同世代の女性などにインタビューし、リアルな声を日々収集。接客業にまつわる話・結婚離婚、恋愛、スピリチュアルをテーマにコラムを執筆中。

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