ショップスタッフからブランド立ち上げへ
編集部:今のお仕事をするきっかけを教えてください。
浦川さん:もともとファッションの仕事が好きで、国内メーカーでショップスタッフとして、地元関西の百貨店やファッションビルで働いてました。新店のオープンや店長を経験したころ、本部に異動するチャンスが舞い込み、MD(マーチャンダイザー)として、東京に転勤したんです。
常に新しいことにチャレンジしたい!
浦川さん:店頭で好きな服を接客して、MDとしては自分が良いと思うものを作って、すごく色んなことを学びました。そして常に新しいことにチャレンジしていきたいなと思っていて、今の社長と一緒に思い切って独立したんです。
編集部:着実にステップを踏まれていて、浦川さんに憧れるショップスタッフも多かったでしょう!
浦川さん:20代は関西でショップスタッフ、30歳になったら上京、初めての一人暮らし、30代半ばで会社立ち上げと、ちょっと遅めのチャレンジという感じですけど(笑)。独立後も、最初は他のブランドのお手伝いをしていたのですが、2018SSシーズンに「Arobe」を立ち上げました。
日常と非日常の架け橋になれるブランドを作りたい
浦川さん:Arobeを作ったとき、何でもあるのではなくて、何かスペシャルなアイテムのブランドをやりたいという思いがあったので、ドレスを中心としたコンセプトにしました。Arobeはお客様の日常と非日常を行き来する存在でありたいと思っています。例えば、特別な時のために買ったドレスって結局毎日着なくなってしまう。でも、合わせるアイテムで日常にも着られるドレスがあったらいいなと。そんな思いでデザインしてます。
編集部:Arobeは浦川さんのやりたいことを詰め込んだブランドなんですね!
浦川さん:そうですね!ちょうど先日、姉がアトリエに来て、デザイン画を描いている私の姿を見て、「そういえば、小さい頃こういうドレスを着た女の子の絵、よく描いてたね」と言われたんです。記憶が薄れていたのですが、もともと絵を描くことが大好きで、幼い頃はドレスを着たお姫様に憧れていたことを思い出しました。「Arobe」を立ち上げたのは、私の潜在的な思いがあったのかもしれません。
小さな頃から絵を描くことが好きだった
編集部:Arobeと言ったら、フラワーモチーフが象徴的です。
浦川さん:毎シーズン、トレンドに関わらず、フラワーモチーフのプリントや刺繍を使ったアイテムをリリースしています。これらも、自分で絵を描くことからスタートしてます。日常を過ごす中で素敵な花と出会った時に写真に撮って記憶して、プリントや刺繍のイメージベースにしています。次の2022SSシーズンのフラワーモチーフは、「壁紙の上に描かれたお花の絵」を表現しています。これは子供のころ、散歩道に咲いている綺麗なすみれの花を見て、その花を再現したくて家の壁に落書きしたんです。結果、母親には怒られたんですけど(笑)そんな昔の記憶を呼び起こしながら、落書きのようなラフなタッチのフラワーモチーフを手書きで描き起こしております。
ドレスのArobeでTシャツを作っちゃう!
それから2022SSにArobeからカジュアルライン「Arobe Flower VASE LINE」をリリースします。花瓶をモチーフした刺繍ワッペンやケミカルレースをTシャツやシャツなどのカジュアルアイテムに取り入れました。女性らしさを残したカジュアル提案がArobeらしいと思います。
編集部:今では人気ショップにも数多く広がっているArobe。順調に成功してきた理由は何だと思いますか?
浦川さん:常にチャレンジ!と思っています。大人になるにつれ、自分の経験の中で「やってきた事」とか「できる事」の中で仕事をしがちですが、常に「やったことがない事」に挑戦していきたいと思っています。
編集部:お話を聞いているとストイックに働かれていらっしゃるように思いますが、お仕事のこだわりはありますか?
浦川さん:私は仕事のスイッチのオンオフが結構はっきりしています。
自宅近くの隅田川沿いをランニングしたり、コロナ渦より前は、ディズニーランドやUSJとか、アミューズメントパークで友人と遊んだりもしますし、下町の老舗の居酒屋で飲み歩いたりもして、ファッションと対極のところにいるときもあります。
あ、あと私、実は水族館の年パスを持っているんです笑。仕事帰りにふらっと一人で行きます。ブルーの水中を優雅に泳ぐ魚を眺めていると気持ちを開放できるなと思っていて。水面のゆらめきや、魚やサンゴの綺麗な配色を発見したりして、それがまたクリエーションにつながることもあります。
編集部:浦川さんの次のチャレンジは?
浦川さん:ドレスに合わせて、どんなジュエリーつけたらいいですか?と聞かれることも多くて。今回はジュエリーブランド「et perlr.(エペルルドット)」とコラボして、Arobeでもジュエリーの展開にチャレンジしてみようかなと思います。シャンパンの泡と真珠を意味した「perle(ペルル)」を、Arobeのドレスを彩るアイコンでもあるパールで表現して、イヤーカフやネックレスなどを作りました。淡水パールやシルバーなどで手に取りやすいプライスを実現して、キレイメなシーンでもカジュアルなシーンでも付けられるデザインにこだわってます。これはArobeのコンセプトとも結びつくのですが、日常と非日常でも使ってもらえると思います。
浦川さん:それから今後は、Arobeの世界観をもっともっと深くして、いつか、アトリエを兼ねた小さなショップを作りたいんです。自分自身で接客も、もちろんしたいです。Arobeのドレスってギャザーの入れ方や分量感、シルエットにこだわりがあるので、着た方が素敵に見えるのです。私は試着室から出てきた時のお客様の笑顔がすごく好きなので、それを見続けたいと思ってます。
▶浦川輝美(うらかわ てるみ)さん
大学卒業後、アパレルメーカーに入社。国内ブランドの販売スタッフ・店長を経験。その後MD職にてブランドの商品企画から販売計画立案などに携わる。2015年styles株式会社の創業とともに入社。国内デザイナーズブランドのセールスを経験後、2017年「Arobe」を立ち上げ、ディレクター兼デザイナーを務める。
▶Arobe(アローブ)
Arobeはフランス語で「ドレス」を意味する『robe』と英語で「一つの、一枚の」を意味する『A』を組み合わせた造語。日常から非日常まで様々なシーンで着用するドレスが、身に着けた女性にとって最良の一枚となるスタイリングを提案するブランド。
編集後記:
「美人聡明」という言葉が似合う浦川さん。上品な立ち振る舞いの中に、ときどき出る軽やかな関西弁がキュート。ご自身でデザインしてテキスタイルを開発して、さらにその魅力を直接伝える。クリエイティブからセールスまでできる人はなかなか出会えないかと思います。POP UPなどで、浦川さんから直接、お話を聞くこともできるかもしれません。これから、久しぶりにやってくる、お買い物のわくわくを、Arobeを通して提案してくれるでしょう。
▶取材:Moe
アパレルメーカーでPR・マーケティングを担う傍ら、ライターとしても活動。興味関心はヘルスケア。おしゃべり大好き、夢はスナック経営。