これは、近所の綾香さん(仮名)に聞いた話です。妊娠7カ月頃、体調の変化に戸惑いながらも、いつも通り買い物に出かけた日のこと。スーパーのレジ待ちでかけられた心ない一言と、その場にいた人たちの反応が、今でも忘れられない出来事になったそうです。

周囲が返してくれた言葉

すると、前に並んでいた50代くらいの女性が静かに振り返りました。「経験してるからこそ、人によって大変さが違うのは知ってると思うけど」その言葉に、私は思わず顔を上げました。後ろの女性は少しムッとした様子で、「私は妊娠中も普通に働いてたわよ」と返しました。

すると今度は、レジの店員さんまで声をかけてくれたのです。「うちの娘も妊娠中は立っているだけで大変だったので、お気持ち分かります」その場の空気が、ふっと変わりました。後ろの女性は、それ以上何も言いませんでした。

心に残った当たり前の優しさ

ちょうどその時、店員さんが椅子を持ってきてくれました。「こちらをお使いください」私は恐縮しながら座りました。すると、最初に声をかけてくれた女性が、やわらかく笑ってくれました。「無理しないでね。元気な時と同じようにはいかないから」その一言で、張りつめていた気持ちが少しほどけました。

私は自分で反撃したわけではありません。でも、誰かが当たり前のことを、当たり前に言ってくれた。それだけで、こんなにも救われるのだと知りました。

帰宅してからも、その日の光景を何度も思い出しました。妊娠中のつらさは、人によって違います。だからこそ、決めつける言葉より、そっと支える一言が必要なのだと思います。

【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。