駐輪場で突然の大パニック
2歳の息子を連れてスーパーへ行った帰り道のことです。駐輪場で突然ぐずり出した息子を抱き上げた拍子に、自転車まで倒してしまいました。買ったばかりの荷物は散乱し、卵は割れ、息子は大泣き。
私は軽くパニックになりながら必死に荷物を拾っていましたが、周囲の人はチラッと見るだけで、そのまま通り過ぎていきました。情けなさと恥ずかしさで、泣きそうになっていたそのときでした。
声をかけてきたのは……
「危ねぇから動かないほうがいいっすよ」低い声が聞こえ、振り向くと、そこには金髪に剃り込み、ジャージ姿のいかにもヤンキーという雰囲気の男性が立っていました。
私は一瞬身構えましたが、男性はすぐに散らばった荷物を拾い集め「卵やっちゃったか〜」と苦笑いしながら袋をまとめ、泣きじゃくる息子にしゃがんで目線を合わせながら、「びっくりしたな〜」と優しく声をかけてくれました。
さらに男性は、倒れた自転車まで起こすと、「荷物持つんで、坂の上まで押しますよ」と当然のように言いました。私が何度断っても、「いや、この状態で無理っしょ」と笑いながら、途中まで荷物を運ぶのを手伝ってくれたのです。
「怖そう」という偏見が消えた瞬間
別れ際、男性は「うちも下に弟いたから、こういうの慣れてるんすよ」と照れくさそうに頭をかいていました。その姿は、見た目の印象とあまりにも違っていて、私の心に強く残っています。
それまで私は、派手な見た目の男性に対して「怖そう」「近寄りづらい」というイメージを持っていました。ですが、本当に困っているときに自然に手を差し伸べてくれたのは、そのヤンキー風の男性だったのです。
スーパーでのハプニングで始まった、まさかの縁
その後ご縁があり、あの日スーパーの帰り道で荷物を一緒に運んでくれたその男性は、なんと今では私の旦那さん。人生は本当に何があるかわからないものです。
人は見た目だけで判断してはいけないと、痛感した出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2019年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:中條みき
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。