私の元同僚・原口さん(仮名)の働く会社では、男性社員の『育児休暇』取得の前例がほとんどなかったそうです。そんなある日、若手の男性社員が育休を申し出ました。渋る上司をなんとか説得し、1ヶ月の育休を取得。復帰後、彼の意外な『仕事』で会社の空気に変化が……!?

育休を取りたい男性社員

私が働いている会社は、男性社員が多い職場です。これまで、女性社員が産休・育休を取得することは普通にありましたが、私が入社してからは、男性社員が育休を取る姿は一度も見たことがありませんでした。

そんなある日のこと。後輩の林くん(仮名)が課長に、「子どもが生まれるので、育児休暇をいただきたくて……」と相談している場面に遭遇したのです。

課長の渋い反応

しかし課長は「う〜ん……おめでたいことだけど、前例がないからなぁ」とかなり渋い反応でした。さらに、「奥さん実家に帰らないの?」「どうにかならないの?」と続けます。その場の空気もどこか微妙で、林くんもかなり言いづらそうでした。

それでも林くんは、「妻ひとりに負担を集中させたくなくて」と、自分の考えをしっかり伝えていました。仕事の引き継ぎ資料もかなり丁寧に準備していて、周囲も少しずつ協力する流れになっていきます。最終的には、無事に1ヶ月間の育休を取得できることになりました。

育休を終えた彼の言葉

そして1ヶ月後。育休から復帰した林くんに、私は「久しぶり〜! どうだった?」と声をかけました。すると林くんは苦笑いしながら、「育児って、こんなに大変だと思いませんでした……」とひと言。

さらに、「やっぱり育休をいただいて本当によかったです」「むしろ1ヶ月じゃ足りないくらいでした(笑)」と話します。夜中の授乳や寝不足など、想像以上に余裕のない毎日だったそうです。そのあと林くんは、上司たちにも同じように育休のお礼を伝えていました。

『社内勉強会』での意外な光景

そんな中、しばらくして社内勉強会が開かれることになりました。なんと、講師役は林くん。テーマは『男性の育児休暇取得について』です。育休前にどんな準備をしたか、仕事の引き継ぎで意識したこと、実際の育児中のスケジュールなど……自身の経験をかなりリアルに話しました。

若手社員たちはもちろん、それまで「男が育休?」という空気だった上司世代も、思っていた以上に真剣に話を聞いています。実際に経験した林くんの言葉だからこそ、説得力があったのでしょう。

変わっていくきっかけに

それからというもの、会社では、少しずつ男性の育休取得者が増えていきました。以前の課長の反応からすると、かなり大きな変化だったと感じています。

最初に声を挙げるのはかなり勇気がいることだと思います。だからこそ私は、(あの会社で先陣を切った林くんは、本当にすごかったなぁ……)と、今でも印象に残っているのです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。