混雑する夕方の店内
私はスーパーでレジのパートをしています。最近はセルフレジを導入する店も増えていますが、うちの店舗は対面レジが中心で、夕方になると仕事帰りのお客様で一気に混み合います。レジ前に長い列ができる日も珍しくありません。
その日は特に混雑していて、私はレジ打ちに追われていました。そんな中、レジ内の五千円札が少なくなっていることに気づき「足りるかな」と気になりつつも、目の前のお客様の対応を続けるしかありませんでした。
突然響いた怒鳴り声
しばらくして、50代くらいの男性のお客様がレジに来ました。五千円以内となった合計金額を伝えると、男性が一万円札を差し出してきたので急いでレジ内を確認すると、五千円札はちょうど切れてしまっていました。
そして「申し訳ありません。五千円札を切らしておりまして……」と説明し、千円札でお釣りを渡そうとした瞬間「釣り銭くらいちゃんと準備しとけ」と大きな声が店内に響き渡ったのです。周囲にいたお客様や店員の視線が一気に集まり、私はレジ前で固まってしまいました。
女性客の思わぬ一言
すると、後ろに並んでいた50代くらいの女性のお客様が、突然「ちょうどよかった! 千円札欲しかったのよ」と声をかけてきました。そして自分の財布から五千円札を取り出し、男性のお釣りを両替しようとしてくれたのです。
さらに女性は「まぁ、価値は同じ五千円だけどね」と笑いながらひと言。すると、後ろに並んでいた別のお客様たちからもクスクスと笑い声が漏れ始めました。男性は居心地が悪くなったのか「いらん」と吐き捨てるように言い、そのまま店を出ていきました。
温かさに救われた日
男性が去ったあと、張りつめていた空気が少しずつやわらいでいきました。助けてくれた女性のお客様に「ありがとうございました」と声をかけると、女性は「頑張ってね」と微笑み、レジから離れていきました。
さらに、後ろに並んでいた別のお客様からも「私も気にしませんよ」「細かい方が助かる時も多いのよ」と次々に声をかけてもらいました。あの日のお客様たちの言葉は、今でも仕事を続ける支えになっています。
【体験者:30代・パート勤務、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。