令和に入り、「お茶汲みOL」という言葉はほとんど耳にしなくなりました。それでもなお、お茶汲みイコール女性社員の役割と考える会社は存在しているようで……今回は、私のお客様の実体験をご紹介します。

古い慣習

私の勤める会社には、今もなお「女性社員がお茶を汲む」という慣習が残っています。毎日朝と午後、男性社員全員にお茶を配るのが当たり前とされているのです。

新入社員のJが配属された初日、最初に説明されたのが給湯室でのこのお茶汲み業務でした。Jは「本当にお茶くみOLって存在するんですね!」と驚きの声を上げ、場の空気が一瞬凍りついたのを覚えています。

給湯室での斬新な視点

先輩社員たちは「私たちは真面目にやっているのだから、ふざけないで」と真剣に返しました。さらに「以前は就業時間前に出勤して準備していたのよ」と語る社員に対し、Jは「就業規則違反すぎて草ですね」と率直な反応を見せたのです。

続けて、ポット専用洗剤を指さして「これは何ですか?」とJ。先輩社員は「これはポット用の洗剤よ。そんなことも知らないの?」と答えると、Jは「クエン酸で代用できますよ。ずっと安く済みますし」と一蹴。

さらに毎日使用している茶葉を見て「こんな高いもの毎日飲んでるんだ。ここもコスト削減できそう」と呟くJ。私たちは言葉を失いました。これまで誰も考えたことのない視点を持ち込んだのです。

合理的な提案

翌日、Jはお茶の使用量を計算し「一杯あたりのお茶のコストはコーヒーと0.2円しか変わらない」と切り出しました。そして「だったらカプセル式のコーヒーメーカーを導入して好きなフレーバーを楽しんだ方が良くないですか?」と提案したのです。

先輩社員は「昔からずっとお茶でやってきたの」と反論。しかし別の先輩社員たちが「実はコーヒーのほうが好き」「カプセルコーヒーを飲んでみたい」と打ち明けると、次々に賛同の声が広がっていったのです。憧れのカプセルコーヒーを飲めるという期待感が、職場全体を一気に変えていきました。

自由な飲み物

最終的に全社員アンケートをとったところ、満場一致で「カプセルコーヒーを導入したい」という結果になりました。かつてお茶汲みを当然と考えていた先輩社員も賛成票を投じていたのです。

今ではお茶汲みは廃止され、社員それぞれが自分の好きなタイミングで好みのコーヒーを楽しむようになりました。古い慣習に縛られていた職場が、すっかり明るく和やかな雰囲気になったのです。

時代に合わない慣習も、誰かの一言や行動で見直されることがある。身の回りのことを当たり前と思わず、視点を変えて見直してみることも大切なのだと気づきました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。