義母の手料理が楽しみ
私は結婚してから、義実家で食事をごちそうになる機会が増えました。義母は料理がとても上手で、私も毎回楽しみにしています。特に和食が得意らしく、煮物やおひたしなどはまるでお店のような味。夫も昔から、義母の作る肉じゃがや筑前煮が大好物なのだとよく話していました。
一方で、私は和食を作るのが少し苦手です。レシピを見ながら作っても、なんとなく味が決まらず、自宅ではハンバーグやパスタなど洋食中心になることが多くありました。夫も普段は特に文句を言うわけではなかったので、(まぁ、家庭ごとに違ってもいいよね……)と思っていたのです。
夫のひと言にモヤッ
そんなある日、義実家で夕飯をごちそうになったときのことでした。食卓には、義母特製の『肉じゃが』が並んでいます。嬉しそうに食べていた夫が、ふと私を見てこう言いました。
「俺これ好きなんだよね〜。恵美も覚えて作ってよ!」悪気のない口調ではありましたが、私は少しモヤッとしてしまいます。(簡単に言うけど、そんなすぐできたら苦労しないよ……)と思ったものの、咄嗟にどう返せばいいのか分かりませんでした。
義母のまさかの返し
すると、そのやり取りをすぐ横で聞いていた義母が、呆れたような顔でこう言ったのです。「何十回も食べたことあるあんたが作れないのに、なんで恵美さんが作るのよ」その場が一瞬しーんとなり、夫も「た、たしかに……」と苦笑い。
さらに義母は、「食べる専門は気楽でいいわね〜!(笑)」と追い打ちをかけます。思わぬ方向からの援護射撃に、私は思わず吹き出してしまいました。
夫婦が変わるきっかけに
そのあと夫は、「じゃあ、今度俺が教えてもらおうかな……」と少し反省したような様子でした。義母の言葉をちゃんと受け止めている姿が、なんだか少し微笑ましくも感じます。
私はあのとき『嫁だから覚えて当然』という空気ではなく、夫に対して同じ目線で言ってくれた義母の言葉をとてもありがたく感じました。それまでは、なんとなく「料理は私が頑張らなきゃ」と思っていた部分もありましたが、夫婦で一緒に教えてもらえばいいかもしれない、と私自身もハッとしました。
あの日の会話は、私たち夫婦の『当たり前』が少し変わるきっかけにもなった出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年2月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。