相手からの「なんでも言ってね」は果たして社交辞令なのか否か、判断は難しいものです。断るべきなのか、あえて少し頼るべきなのか。果たして正解はあるのでしょうか……今回は、そのひと言にまつわる、私の友人のエピソードをご紹介します。

海外生活

数年前、私は夫の海外赴任に伴い、生後4か月の赤子を連れて異国で暮らし始めました。義母は大好きな一人息子が栄転したと有頂天。時差を気にせず毎日連絡を寄こしてきます。私は慣れない育児と海外生活で疲弊しながらも、毎日義母の連絡に応えていました。

欲しいもの

ある日、義母から「欲しいものはある? 日本から送るわよ」との申し出。まだ新生活を始めて1か月ほどで特に必要なものはなく、「今のところ大丈夫です」と丁寧に断りました。

しかし「強いて言えば?」「どんなものでもいいのよ」「海外だと手に入らないものもあるでしょ?」と毎日リクエストを要求してくる義母。

私は「強いて言えばレトルトの離乳食ですかね。でもまだおかゆも始めていないですし、食品は海外発送ルールが厳しいので本当に大丈夫ですよ」と伝えました。義母は「おっけー!」と笑顔で返事をしたのです。

義母からの電話

数日後、義母から着信があり、通話を開始するや否や怒鳴ってきました。「送れないモンを送れっていう馬鹿がどこにいるんだ!」と怒り狂う義母。

事情を聞くと、半年分の離乳食を購入して送ろうとしたものの「肉が含まれるものは送れません」とほとんど差し戻されたとのこと。さらに「近所の○○さんは海外に何でも送れるって言ったのに!」と激怒。私がどんなに謝っても「迷惑料を払ってほしいくらいだ」「何考えてんだ」と怒りは収まらず。

すると郵便局員が電話口で「何度も申し上げてますが、特定の国には肉を含む食品は送れないルールなんです」と説明。続けて周囲の迷惑になるからと退店を促されると、義母はようやく黙り込みました。義母はなんと郵便局窓口から怒りの電話をかけていたのです。

止んだ連絡

義母は結局、送れなかった離乳食を友人に配り歩いたそうです。それ以来、毎日の連絡の頻度は減り、私も少し肩の荷が下りました。時差を気にせず届いていた連絡が来なくなったお陰で私の寝不足も解消され、少しずつ海外生活にも慣れていくことができたのです。

善意の行動も、相手の状況や環境を理解しなければ迷惑に変わることがある。思いやりは「押し付ける」ものではなく「寄り添う」もの。相手を尊重する心が大切なのだと改めて痛感しました。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。