突然言われた「仕事を辞めてほしい」
結婚してからも、私は正社員として働いていました。忙しい時期は確かにありましたが、洗濯も食事も、できる範囲ではちゃんとやっていたつもりです。お惣菜に頼る日もありましたが、それでも家のことを放り出した覚えはありませんでした。
だからこそ、夫から突然「もう仕事辞めて専業主婦になってほしい」と言われた時は、本当に耳を疑いました。最初は冗談だと思ったのです。でも夫は真顔で、「最近、家のことがおろそかになってるし」「母さんも、妻は家庭を守るべきって言ってた」と続けました。
その瞬間、胸の奥がスッと冷えた気がしました。義母までそう思っているのか……そう考えると、なんだか自分だけ責められているようで、すごく苦しくなったのを覚えています。
義実家で流れた重たい空気
数日後、義実家で食事をすることになりました。私は正直、かなり気が重かったです。もし義両親まで「妻なんだから家に入るべき」と言い出したら、私はどうしたらいいのだろう。そんなことばかり考えていました。
すると食事の途中、夫が軽い口調で言ったのです。「由美もそろそろ仕事辞めた方がいいと思うんだよね」私は箸を持つ手が止まりました。空気が一気に重くなって、思わず黙り込んでしまったのです。
ところが、次の瞬間。「え? なんで由美さんが辞めるの?」先に口を開いたのは、義母でした。私は思わず顔を上げました。
義両親の言葉に救われた夜
夫が「家のこともあるし」と言いかけた時でした。義父が真顔で、「お前、自分の家事はどれだけやってるんだ?」と返したのです。さらに義母も続けました。「由美さん、この前もあなたたちの家に寄ったとき、仕事帰りにお惣菜買って急いで帰ってきてたでしょう。十分頑張ってるじゃない」
その言葉を聞いた瞬間、危うく泣きそうになりました。私はてっきり、責められる側だと思っていたからです。でも夫はまだ納得していない様子で、「子どもができたら大変だし」と言いました。すると義母が、少し強い口調で言ったのです。
「だからって、由美さんだけが仕事を諦める前提なの?」食卓がシ~ンと静まり返りました。義父も、「今の時代、夫婦で支え合うものだろ。自分が楽したいだけに聞こえるぞ」とピシャリ。夫は完全に言葉を失っていました。
味方がいるだけで人は救われる
帰宅後、夫はかなり気まずそうにしていました。そして後日、「仕事辞めろって簡単に言いすぎた。ごめん」と謝ってくれたのです。それからは、少しずつですが家事を手伝うようになりました。休日に洗濯機を回してくれる日も増え、「夫婦でやる」という意識が前より出てきた気がします。
もちろん、急に完璧になったわけではありません。でも、あの夜を境に、私の気持ちはかなり変わりました。もしあの日、義母と義父が何も言わなかったら……私はきっと、「妻だから我慢するしかない」と思い込んでいたのかもしれません。味方がいるだけで、人ってこんなに救われるのだと、今でも時々思い出します。
【体験者:30代・女性会社員・主婦、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。