今回は、友人の智子さん(仮名・看護師)から聞いたレディスクリニックで起きた出来事をご紹介します。智子さんは看護師として長年働いているのですが、「あそこまで空気が凍った待合室は初めてだったかもしれない」と苦笑いしていました。医療現場ではクレーム対応も珍しくないそうですが、その日は少し様子が違っていたようで――

「今すぐ診て!」と突然始まった怒号

私はその日、夕方の外来対応をしていました。予約がかなり詰まっていて、待合室もほぼ満席。妊婦さんや、体調が悪そうに椅子にもたれている患者さんもいました。そんな中、予約なしの女性が受付へ来たのです。「今すぐ診てください!」かなり強い口調でした。

受付スタッフが、「1時間ほどお待ちいただく可能性があります」と説明すると、女性の表情が一気に変わりました。「は!? 私は客なんだけど!」待合室に響くような大声でした。

さらに女性は、「こんな病院、口コミに全部書いてやるから!」と怒鳴り始めたのです。周囲の患者さんたちも、明らかに不安そうな顔をしていました。

スマホを向けられた瞬間、空気が変わった

私は慌てず対応しようと思い、「順番にご案内しておりますので」と説明しました。ですが、女性はさらにヒートアップ。「看護師の態度が冷たい!」そう言いながら、突然スマホをこちらに向けてきたのです。どうやら撮影していたようでした。

「名前、覚えたから」その言葉に、待合室の空気がピリッと張り詰めました。私は正直、少し怖かったです。周囲には妊婦さんや小さく震えている患者さんまでいたので、「このままではまずい」と感じました。

すると院長が、診察の合間を縫って待合室へ来てくれたのです。

「病院を潰せる」と言った女性の誤算

院長が冷静に事情を聞こうとすると、女性はさらに強気になりました。「私はSNSで発信力があるの!」「この病院なんて簡単につぶせるから!」そこまで言い切ったのです。

ただ、女性は気づいていなかったのでしょう。待合室には防犯カメラがあり、怒鳴っている様子も、無断撮影している場面も撮影されています。しかも、隣にいた患者さんが小さな声で、「さすがに怖かったです」と証言してくださったのです。その瞬間、流れが完全に変わりました。

院長は声を荒げることなく、「他の患者さまへの迷惑行為と無断撮影はお控えください。続く場合は警察へ相談します」と静かに伝えました。すると、あれだけ勢いのあった女性が、急に黙り込んだのです。あの静まり方が、逆に印象に残っています。

嘘の口コミより最後に残ったもの

女性はそのまま帰宅しました。ところが後日、病院の口コミサイトに「診察拒否された」「暴言を吐かれた」といった事実とは異なる内容が複数投稿されていたのです。ただ、病院側には防犯カメラの映像が記録として残っています。

運営へ報告した結果、口コミは削除対応になり、女性のアカウントも利用制限がかかったそうです。
さらに後日、その女性は別件でも近隣店舗とトラブルになっていたことが分かりました。

医療現場では、多少のクレーム対応は珍しくありません。でも、周囲を威圧したり、事実と違う口コミで攻撃したりすると、結局は自分自身の信用を失ってしまうのだと、あの日あらためて感じました。そして何より、待合室で不安そうにしていた患者さんたちの表情が、今でも忘れられないのです。

【体験者:50代・女性看護師、回答時期:2025年1月】

EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。