若い世代では、LINEの文末に絵文字がないだけで「怒っているのでは」と受け取られることが多いといいます。送り手にそのつもりがなくても、ぶっきらぼうに見えてしまうことも。それは果たして意図しているのかそれとも……今回は、私の友人のエピソードをご紹介します。
優しい義両親
私の義両親はいつも穏やかで温かく迎えてくれる存在です。会うたびにお土産を抱えきれないほど渡してくれ、時には「夫には内緒ね」と言ってこっそりお小遣いまで手渡してくれる。そんな優しさに触れるたび、私は義家族に恵まれたと感じていたのです。
そっけない文面
しかし、心の片隅には小さな不安がありました。直接会うと優しいのに、LINEでは一文だけの素っ気ない返事が続くのです。「ありがとうだけど最後にしてください」「気持ちだけ。だからほんとに大丈夫」など、冷たい印象が漂う短文。
ある日、義母がフラダンス仲間に送るはずだったであろうLINEを誤って私宛に送信した時のこと。そこには長文で連続の絵文字だらけの文面が。義母はすぐに誤送信に気づき、送信は取り消されたのですが、私の疑念を増幅させるには十分でした。
自分だけ嫌われているのではないかという不安。夫に相談しても「気にしすぎだよ」と軽く流され、心は晴れませんでした。
勇気を出して聞いてみると……
ある日、私は思い切って義両親に尋ねました。「私の態度で気になるところがあれば直すので教えてください」と。しかし義両親は驚いた様子で「何もないよ、急にどうしたの?」と返答。そこで私は、フラ仲間には絵文字だらけの長文なのに、自分へのLINEだけ短いことを率直に伝えました。
すると義両親は少し照れながら理由を明かしました。「我が家、家族間のやりとりは五七五で統一するルールなのよ」と。思い返せば夫の返事も俳句のようなリズムなことに気づいたのです。「何時に帰宅する? 夕ご飯いる?」と聞くと「いらないよ、恐らく10時、明日食う」「今改札。コンビニ寄ってビール買う」など。
義両親は「本当の娘だと思っていたから、ルールを伝えることすら忘れていた」と平謝りでした。
深まった絆
義家族は俳句コンテスト入選をきっかけに、家族間の連絡を五七五で行う習慣を始めたそうです。頭を使うからボケ防止にもなるとのこと。
ただし、ずっと五七五だと疲れるため、フラ仲間には反動で絵文字満載の長文を送っていたのです。事情を知った私は胸のつかえが取れました。それ以来、義母とのやりとりは絵文字いっぱいの五七五。ユーモラスで温かな義家族との絆をさらに深めています。
家族のルールに隠されたユーモア。誤解から始まった小さな不安は、五七五という独特の文化を知ることで、むしろ新しい楽しみ、親しみへと変わったのです。現代社会ではめったに使うことのない五七五。時には季語を入れて五七五で返信してみるのも新鮮かもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。