不妊治療は肉体的にも精神的にも辛いことが多くあります。それ故、余裕がなくなり周りの人に当たってしまったり、夫婦関係が悪くなってしまうことも少なくありません。そんな時に慰めてくれる存在がいたとしたら……今回は、私の友人の不思議な実体験をご紹介します。

二人目不妊

私は二人目不妊に悩んでいました。不妊治療を続けても原因は分からず、先の見えない日々に心が沈んでいったのです。

夫や両親、義両親からは「一人いるんだからそこまでしなくても」と言われました。優しさからの言葉だと理解しつつも、どうしても二人目が欲しいという気持ちは消えることはありません。

優しい長男

治療による身体的・経済的負担は夫婦仲にも影響し、次第に険悪な空気が漂うように。そんな私たちを見て、必死に家族を笑わせようとしてくれる長男。変顔をしたり芸人の真似をしたり、ときには「虫がいる!」と冗談を言って私を驚かせました。

最初は笑って受け流していたものの、余裕を失った私は冷たく返してしまうことが増えていきました。それでも長男が健気に笑いを届け続ける姿を見て、私と夫は「この子のために仲良くしよう」と心を入れ替えるきっかけをもらったのです。

とある深夜

経済的な事情から「次回の体外受精で最後にしよう」と決めましたが、結果は残念ながら妊娠には至りませんでした。泣きながら抱き合い「家族三人で楽しく生きていこう」と決心した矢先。

ある深夜に「ママ、家の中に鳥がいるよ!」と私を起こす長男。夢と勘違いしているのかな、と思い「唐揚げは好きだけど鳥は苦手だよー」と返す私。しかし長男は「唐揚げになんてしないで、可哀想」と真剣に答えました。

寝ぼけているのだろうと「ごめんごめん」と受け流そうとすると、「ママ、ちゃんと鳥さんに謝って」と訴える長男。あまりの必死さに押されて「鳥さん、ごめんなさい」と謝ると、満足したように眠りについたのです。

その日は元旦。私は「初夢に鶴でも見たのかな、縁起がいいかも」と思いながら眠りにつきました。

鶴だったのかそれとも

翌日、長男に尋ねても夜中のことは覚えていません。朝食を終え、掃除をしていると未使用の妊娠検査薬が出てきてきました。「そのまま捨てるのもなんだし」と試したところ、なんと陽性反応が出たのです。

信じられず新しいものを購入し、再度検査しても結果は同じ。病院で確認するとすでに妊娠6週目に入っていました。夫や両親に伝えると皆が飛び跳ねて喜び、無事に二人目を出産。今では二人の男の子の母として賑やかな毎日を送っています。あの夜、長男が見た「鳥さん」は、もしかするとコウノトリだったのかもしれません。

不妊治療に限らず、人生には辛い試練が訪れます。その時に卑屈にならず、支えてくれる人の存在に気づき、大切にできたなら、たとえ望んだ結果が得られなかったとしても、人として確かな成長を遂げているはずです。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2026年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。