食卓で言葉を失った夜
義理の親戚夫婦の家に泊まった日のことです。夕食の時間になり、食卓についた私は思わず固まりました。小さな粒のようなものが皿に並んでいたからです。「これ、なに?」恐る恐る聞くと、「蜂の子だよ」とあっさり返されました。
テレビで見たことはありましたが、まさか実際に食べることになるとは思っていませんでした。しかも、それだけでは終わりません。「こっちは蜂の子ご飯ね」そう言って出されたのは、甘辛く煮付けた蜂の子が入った炊き込みご飯。さらに、「天ぷらもあるよ」と別皿まで登場し、完全に逃げ場がなくなったのです。
正直、かなり緊張していました。でも、せっかく準備してくださった料理を断るのも申し訳なくて、「少しだけいただきます」そう言いながら、静かに覚悟を決めました。
恐る恐る食べてみると……
まずは蜂の子ご飯をひと口食べてみました。かなり身構えていたのですが、思っていたような強いクセはありません。むしろ、甘辛い味付けがご飯によく合っていて、意外なくらい食べやすかったのです。
「あれ?」気づけば、もうひと口食べていました。続いてすすめられた天ぷらも口にしてみると、外はサクッと軽く、中はほくっとした食感。塩で食べると香ばしさが引き立ち、これまた想像以上のおいしさでした。
さっきまでの警戒心が、少しずつ消えていくのが自分でも分かったのです。
「無理」が変わった瞬間
最初は「あり得ない」と思っていたのに、気づけば普通に箸が進んでいました。むしろ、「これ、結構好きかもしれない」と感じ始めていたのです。親戚の方も「最初はみんな驚くんだよ」と笑っていて、その場の空気もどこか温かく感じました。
緊張していた食卓が、いつの間にか楽しい時間に変わっていたのです。食べ物って、見た目だけでは分からないものです。あれほど身構えていた自分が、少し恥ずかしくなりました。
食わず嫌いを反省した出来事
食事が終わる頃には、最初の戸惑いはほとんど消えていました。帰り際、「お土産に持っていく?」と聞かれたとき、一瞬迷ったものの、「いただきます!」と答えていた自分に驚きました。数時間前なら、絶対に想像できなかった返事でした。
見た目だけで苦手だと決めつけていたことを少し反省しながら、新しいおいしさに出会えた印象的な夜でした。
【体験者:50代・主婦、回答時期:2026年5月】
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。