AI活用が進む、友人さきさん(仮名・30代女性)の職場で、便利さの裏に生まれた違和感がありました。「効率化」には良いものの、仕事で人間らしい温度や思いが消えていく。ある一言をきっかけに、空気が少し変わったエピソードです。

AIに頼りすぎた部長

私の職場では、50代の部長が「AI活用」を強く推進。資料作成やメール対応は格段に効率化され、最初は誰もがその便利さを実感しました。ただ、徐々に違和感が生まれます。

会議では部長がAIで作った文章をそのまま読み上げ、「俺より良いこと言うからさ」と笑うものの、どこか“自分の言葉じゃない”空気が漂います。資料も「AIが作ったから」という、自分の発言からの責任回避のような態度も気になりました。

消えていく『人を見る目』

さらにその違和感は人事評価で決定的に。評価コメントはAI任せで、部下一人ひとりへのフィードバックはほぼテンプレ。特に事務担当者への評価は一言一句同じ内容という酷さ。

「ちゃんと見てくれているのか?」という不信感が広がり、「結局AIが評価してるだけじゃない?」という空気に。効率化のはずが、職場の温度は下がっていきました。

思わぬ形で本人に届いた本音

そんなある日、新入社員2人の雑談を部長が偶然耳にします。「部長ってAIに使われてる側ですよね」「活用じゃなくて依存じゃない?」と笑いながらの会話。でも内容はかなり核心を突いていました。

「AIより部長のほうが機械みたい。乗っ取られてるしなんか映画みたいな展開」と続いたその一言に、部長は考えさせられたそう。誰も直接は言わない本音が、思わぬ形で刺さりました。

『使う側』に戻った瞬間

その出来事をきっかけに、部長は変わります。会議では自分の言葉で話し、人事評価も一人ひとりと向き合って書くように。「便利だけど、乗っ取られてたな」と本人も苦笑い。

AIとの距離感を見直したことで、職場の空気も少しずつ改善し、「ちゃんと見てもらえている」という安心感が戻ってきました。

たった一言でも、届けば人は変わる――そんな小さな救いを感じる出来事でした。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年1月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:橘 りお
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。