葬儀の場で「効率」を語るエリート従兄
祖父が亡くなった時の出来事です。親戚一同が集まり、厳かな雰囲気の中で葬儀が執り行われていましたが、一人だけ不機嫌そうに何度も時計を気にしている人物がいました。従兄の健一(仮名)です。
彼は都内の有名企業で働いていることを鼻にかけており、地方の古い習慣やしきたりを常にバカにしていました。「田舎の葬式は無駄に長いんだよな」と堂々と口にし、周囲は困惑していました。
悲しむ親族への、耳を疑う暴言
出棺前の最も大切な時間に、事件は起きました。焼香の列に並んでいた私の後ろで、健一がまた大きな独り言をつぶやいたのです。 「まだかかるのかよ。俺、明日大事なプレゼンがあるんだ。これだから効率の悪い行事は嫌なんだよ」
さらに、あまりの悲しみに泣き崩れていた私の母に対し、彼は追い打ちをかけるように言い放ちました。 「叔母さんも泣きすぎ。感情的になっても意味ないし、効率悪いよ」 故人を偲ぶ場でのそのあまりに無礼な言葉に、私は怒りで震え、限界に達していました。
「君、〇〇の……」肩を叩いた初老の男性
その時でした。焼香を終えたばかりの一人の初老の男性が、静かに健一の肩を叩きました。 「君、〇〇(健一の会社名)の営業二課の佐藤くん(仮名)だね? 君の上司に、葬儀の場での立ち振る舞いについて後で聞いておくよ」
突然、自分の所属を言い当てられた健一は「えっ、あ、はい……」と困惑。しかし、その男性の顔をよく見た瞬間、彼は顔面蒼白になりました。 実はその男性は、健一が勤める会社の筆頭株主である大企業の会長であり、亡くなった祖父の古い友人だったのです。
震える従兄と、守られた静寂
相手の正体を知った健一は、それまでの横柄な態度はどこへやら、その場で震えながら「申し訳ございません!」と謝罪を繰り返しました。 自分のキャリアや立場が危うくなったことを悟り、顔を真っ赤にして縮み上がったようでした。
その後、健一は一言も喋れなくなり、借りてきた猫のように大人しくなりました。エリートを気取って故人や親族を軽視していた彼は、自分が一番恐れている「権威」によって、その無礼さを裁かれることになったのです。
祖父が最後に繋いでくれた縁が、大切な別れの時間の静寂を守ってくれた……そう感じた出来事です。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ